最新記事
韓国

「万博招致失敗」に揺れる韓国...不利な現実に集団で目をつぶり、屈辱的な落選をした原因は...

Korea’s Expo Humiliation

2023年12月13日(水)06時45分
イ・ユンウ

外交相手は日米だけ?

尹は、「96カ国の首脳に会い」、釜山への投票を求めたとうそぶいた。政府は招致活動に4億ドル以上を費やし、外務省は招致活動に全力を注いだ。閣僚をはじめ政府高官が世界を飛び回って釜山をアピールし、大統領夫人は関連品を自らデザインして着用した。

だが、こうした招致外交は、完全に筋違いだった。

かねてから尹は、韓国を「グローバル中枢国家」と位置付け、野心的な外交戦略を唱えてきた。それ自体は結構だが、実際の外交活動はアメリカと日本ばかりを向いてきた。それ以外の国との関与は薄っぺらで、韓国の孤立を招いていると指摘されてきた。

実際、尹の下で韓国は中国との対立を深め、その結果、中国の影響力が拡大しているアフリカ諸国を遠ざけた。中国は今回の万博開催地を決める投票で、釜山支持を撤回するよう、アフリカや中南米の一部に働きかけたとされる。

屈辱的な万博招致の失敗は、「外交のパラダイムを変える」よう尹を促すはずだと、最大野党「共に民主党」はみる。

与党「国民の力」の李俊鍚(イ・ジュンソク)前代表も、尹の外交姿勢が、韓国が世界的なイベントの開催地になる可能性を傷つけていると認める。

尹は外交面で、中国との対立を抑えて、途上国が中国のしっぺ返しを恐れずに韓国とも良好な関係を維持できるビジョンを示すべきだった。

経済力を武器にした招致戦略も、空回りに終わった。

国際機関における投票では、途上国の票をどれだけ獲得できるかがカギになる。そして途上国の票獲得は、見返りを約束する形で行われることが多い。

韓国政府はかねてから、「魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教える」支援の重要性を唱え、気候変動や食料安全保障の分野における技術移転や協力を提案してきた。

だが、こうした支援はイデオロギー的で、具体性に欠ける。これに対してサウジアラビアの提案には強烈な魅力があった。アフリカ諸国に数十億ドルの開発援助を提案するとともに、莫大な債務の返済支援や、合計250億ドル相当の投資も申し入れた。

展覧会
奈良国立博物館 特別展「超 国宝―祈りのかがやき―」   鑑賞チケット5組10名様プレゼント
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

EUが排ガス規制の猶予期間延長、今年いっぱいを3年

ビジネス

スペースX、ベトナムにスターリンク拠点計画=関係者

ビジネス

独メルセデス、安価モデルの米市場撤退検討との報道を

ワールド

タイ、米関税で最大80億ドルの損失も=政府高官
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 10
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中