「10億ドルの鉄壁」が破られた、アメリカがハマスの奇襲成功から学ぶべきハイテクの欠陥
DISASTER AT THE BORDER
ハマス程度の弱小集団がイスラエルのハイテク防御を突破できるなら、はるかに進んだ技術力を持つ潜在的な敵性国家が防御技術におけるアメリカの優位を脅かす可能性も考える必要がある。
「これらの国とその代理勢力のテロ組織は、ますます能力を高め、極めて高度な技術を手に入れようとしている」と、民主主義防衛財団のボーマンは言う。
中国とロシアは、今やサイバー戦争とAIのエキスパートだ。
独自のステルス爆撃機や、既存のミサイル防衛システムでは撃ち落とせない極超音速ミサイルを実戦配備している。
イランは世界有数の爆弾搭載ドローンの保有国であり、北朝鮮は射程距離1万キロ以上の核ミサイルを最大60発発射できる能力がある。
10月7日の惨劇から学べる最も重要な教訓は先端技術だけに頼りすぎることの危険性だと、イスラエル軍と密接な関係を持つ防衛シンクタンク「IDSF」のヨッシ・クーパーバッサー研究部長は強調する。
「遠くから状況をコントロールできるので、現場にいる必要はないと感じるようになったら、それは大失敗の始まりだ」
クーパーバッサーは陸軍情報部隊の元調査責任者。2度の戦争に従軍した経験から、先端技術の限界を痛感しているという。
「どんなテクノロジーも戦場の兵士に取って代わることはできない」
先端技術の魅力は地上軍の兵士に比べて低コストなことだと、クーパーバッサーは言う。
経済面に加え、人的損害も減らせるという意味だ。
ハイテク兵器は食料や水、給料なしに不眠不休で働き、人間の目が見落としがちな対象を捕捉し、人間よりも速く正確に、より遠くを攻撃できる。それに、機械が破壊されても誰も泣かない。
最後にものをいうのは数の力
民間人を守り、戦いに勝てるのは先端技術と人間の適切な組み合わせだと、クーパーバッサーは主張する。
「AIや最先端のテクノロジーは人間の助けになるが、どこかで人の手が関わることが必要不可欠だ。機械に依存しすぎると、私たちのように不意を突かれる。敵を抑止する技術的解決策を導入するたびに、敵もそれを克服する方法を考え出す」
敵は洗練された高価な先端技術を単純なローテクで巧みに無力化する方法を身に付けつつある。
「ハマスは市販のテクノロジーを使い、何百万ドルもするセンサーや戦車に対抗した」と、ブルッキングス研究所のネルソンは指摘する。