「10億ドルの鉄壁」が破られた、アメリカがハマスの奇襲成功から学ぶべきハイテクの欠陥

DISASTER AT THE BORDER

2023年12月11日(月)12時05分
デービッド・H・フリーマン(科学ジャーナリスト)

231212p18_GZS_05.jpg

小型監視用ドローン「スカイラーク」を飛ばす準備をする訓練中のイスラエル兵(2012年) URIEL SINAI/GETTY IMAGES

共同開発したハイテク機器

米国土安全保障省は、新型のイメージングセンサーやレーダーセンサーの国境の「自律型監視塔」への導入や、国境警備用のドローンやトンネル検知センサーの導入に向けて動いていると明らかにしている。

いずれもイスラエルで使われているものと似たタイプだ。

アメリカは国境警備においては、遠隔操作もしくは自律型の機関銃を使っていないが、米軍基地や米海軍の艦艇の防御のためには使っている。

例えば米軍は、ガザとの境界で使われているのと同じイスラエルの「サムソン遠隔操作式銃塔」を100台ほど配備した。イスラエル製の監視用小型ドローン「スカイラーク」も購入している。

イスラエルが(もしくはイスラエルとアメリカが共同で)開発し、米軍が世界各地の都市や基地を守るために運用しているハイテク防衛システムはほかにもある。

アイアンドーム関連で言えば、迎撃ミサイルは主にアメリカ製で、米海兵隊は2000発を発注済みだ。

ミサイル発射台はイスラエル製で、アメリカは2基を保有している。いずれも近々、防衛力強化のためにイスラエルに送られる予定だ。両国が共同開発したさらに強力なハイテク防空システム「ダビデの投石器」も、米軍とイスラエルの双方で運用されている。

メルカバと同様、米軍のM1エイブラムズ戦車やその他の装甲車両もハイテク防護システムで守られているが、その一部はイスラエル軍と共通だ。

例えば飛来するミサイルなどを探知し、自動的に小型ミサイルを発射して爆破する「トロフィー」。飛来するミサイルのすぐ近くに「迎撃体」を発射して爆発させ、その衝撃波で破壊または軌道をそらす「アイアンフィスト」もそうだ。

イスラエルはさらに、戦車の装甲板の上に装着し、弾丸が当たると外側方向に爆発させて戦車内部を保護する「爆発反応装甲」用のタイルを米軍に納入している。

加えて国防総省は10億ドル以上の年間予算をAIにつぎ込んでいる。

その一部は人間の兵士の関与を減らす目的、つまり自律型の車両や兵器の開発・生産に使われる。既に自律型の対潜水艦無人艦や対戦車自動誘導ミサイルのテストは、かなり進んでいる。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中国、26年投資計画発表 420億ドル規模の「二大

ワールド

ロシアの対欧州ガス輸出、パイプライン経由は今年44

ビジネス

スウェーデン中銀、26年中は政策金利を1.75%に

ビジネス

中国、来年はより積極的なマクロ政策推進へ 習主席が
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 5
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 6
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 7
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 8
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 9
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中