「10億ドルの鉄壁」が破られた、アメリカがハマスの奇襲成功から学ぶべきハイテクの欠陥
DISASTER AT THE BORDER
米軍においても過去20年間、ハイテク機器の使用は拡大の一途だった。
標的を自動捕捉する自律型ミサイルや、自律走行する装甲車、敵の兵器を無力化するエネルギービーム、兵士に着用させて戦闘力を高める金属製の外骨格型パワードスーツなどのテストも進んでいる。
その一方でアフガニスタンでの20年にわたる戦闘では、一般市民に紛れ込み、山岳地帯の洞窟に暮らし、電子機器による通信を使わず、死をいとわず襲ってくるローテクな敵の前では、最新鋭の兵器や情報収集機器も大して役に立たないということが白日の下にさらされた。
アメリカとライバル関係にある国々は、米軍とほぼ肩を並べる水準の兵器を持っている上に、軍隊の人員規模という点ではアメリカを上回っている。
「テクノロジーは兵力を何倍にもできるが、テクノロジーさえあればいいというものでもない」と、ボイドは言う。「米国防総省はイスラエルの状況を注視している。これはアメリカ自身の弱点について考えるきっかけになっているはずだ」
「イスラエルで起きているようなことに、いつかアメリカも遭遇するかもしれない」と、ボーマンも言う。
「ロシアがウクライナに侵攻し、中国が台湾を脅かし、イランがイスラエルを脅かす一方で核兵器開発に一歩ずつ近づき、北朝鮮の脅威もあるなかで、アメリカは今、私がこれまで見たこともないような恐るべき安全保障環境に置かれている」
アメリカがイスラエルと類似の(全く同じ場合も多い)ハイテク防衛機器に依存していることは、アメリカとその同盟諸国の懸念の種だ。
ガザ境界のアイアンウォールや、ミサイル迎撃システムのアイアンドームなどイスラエルの防衛テクノロジーは、米オバマ政権期に結ばれた合意の下でアメリカと共同開発された。
今日、そうした技術や類似のシステムの多くはアメリカの国境警備でも使われている。
メキシコ国境で不法入国者などの摘発に大きな役割を果たしているドローンの多くはイスラエル製で、イスラエルもガザ境界で同じものを使っている。