日本の女子の理科学力は、思春期になると男子より低くなる
思春期に女子生徒が理数教科の勉強から遠のいていくその背景は…… Rawpixel.com/Shutterstock
<理科が得意な女子に対して周囲がネガティブな反応をすることが原因か>
日本は理系の分野に進む女子が少ない。これは以前から問題視されていて、国策として「リケジョ」を増やす方針が示されている。
しかし、こうも言われる。男子と女子では理数教科の出来が違うし、そもそも女子は理系職を志望しない。これは自然なことで、仕方ないのではないか。果ては「理数教科は男子の方ができて当たり前、脳のつくりが違うから」とまで言われたりする。
だが、理数系の学力が「男子>女子」というのは普遍的ではない。それが分かる調査データは数多いが、IEA(国際教育到達度評価学会)の国際理科学力調査「TIMSS 2019」の結果を見てみる。文科省の調査レポートでは、小4と中2の理科平均点が国別に出ているが、元の資料から男女別の数値も分かる。<表1>は、日本を含む主要7カ国のデータだ。
男女の平均点と、女子が男子より何点高いかが示されている。小4を見ると、男子より女子の平均点が高い国が多い。日本もそうで男子が559点、女子が565点と、女子の方が高くなっている。
中学生になるとこれは逆転し、日本の中2では男子が女子より10点高くなる。以後、発達段階を上がるにつれ、理科学力が「男子>女子」の傾向が固定する。OECDの学力調査「PISA」の対象は15歳生徒(高1)だが、どの年でも科学的リテラシーの平均点は男子が女子より高い。
押さえたいのは、理科平均点が「男子>女子」というのは思春期以降ということだ。進路を意識し始めるようになるに伴い、理科ができる女子が変わり者扱いされ、「女子が理系に進んでもいいことない」などと、周囲からネガティブなジェンダーメッセージを発せられることもあるだろう。その結果、女子は理数教科の勉強から遠のいていく。
それはほかの国も同じ、ということではなさそうだ。<表1>を見ると、アメリカは小4では「男子>女子」だが、中学校になると逆転する。北欧のスウェーデン、フィンランドでは小4から「男子<女子」で、中2になるとそれがより顕著になる。思春期のジェンダー的社会化は国によって異なる。