最新記事
ロシア

ロシア軍元将校で反プーチン極右のギルギン、拘置所から大統領選に決死の出馬表明──「第2のプリゴジン」の運命か

New election rival spells bad news for the Kremlin

2023年11月21日(火)16時14分
イザベル・ファン・ブリューゲン

英オックスフォード大学所属で冷戦後の旧ソ連と東欧諸国の専門家であるブラド・ミフネンコは本誌に対し、ギルキンは、ロシア政府は自分の名前が候補者リストに載るのを何としても阻止しようとすることを予想していると述べた。

「ギルキン出馬の表向きの目的は、有権者の10~15%を占める極右に訴えることだ。極右は、ウクライナを屈服させて、さらにポーランドに進軍することができないロシア軍の『無能ぶり』と『腐敗』を非難している」

だがギルキンの真の狙いは「自分の身を守ることだ」とミフネンコは言う。「ロシア政府を怖がらせて、『プーチンの再選まで口をつぐんでいれば起訴を全て取り下げてやる』と言わせることだ」と述べた。

「ギルキンは最近、拘留中に健康状態が急速に悪化したと訴えている。9月後半には、拘留施設で殴られて血を流し、目の周りにあざが出来て鼻はひどく腫れているか骨折した様子の屈辱的な写真が、ロシア政府のプロパガンダを発信するメディアに流出した」と、ミフネンコは言う。「だからギルキンには、自分の命の危険を心配する十分な理由がある。大統領選への出馬は彼にとって、大勢の人の注目を集めて最悪の事態を避けるための方策の一つだ」

第2のプリゴジンか

ギルキンは8月にテレグラムで、自分がプーチンよりも優れた候補者である6つの理由を挙げ、プーチンは国を率いるにはあまりに「寛容」で「人を信じすぎる」と指摘。「軍務に関しては私の方が現大統領よりも有能だ」と主張していた。

ウクライナ戦争を公然と批判していることで、ギルキンはロシアの傭兵組織「ワグネル」の創設者だったエフゲニー・プリゴジンと比較されることが多かった。プリゴジンは6月24日にロシア軍の上層部に対する反乱を企てたものの失敗。その数週間後、プライベートジェットの墜落によって死亡した。

プリゴジンは反乱を率いる何カ月も前から、ロシア軍の上層部や、彼らによるウクライナ戦争への対応ぶりを非難していた。従ってその墜落死は、暗殺の憶測を呼んだ。ロシア政府は、プリゴジンがプーチンの命令によって殺害されたという憶測は「真っ赤な嘘」だと主張した。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

プーチン大統領と中国外相が会談、王氏「中ロ関係は拡

ワールド

米下院2補選、共和が勝利へ フロリダ州

ワールド

ロシア製造業PMI、3月は48.2 約3年ぶり大幅

ワールド

ロシア政府系ファンド責任者、今週訪米へ 米特使と会
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    【クイズ】2025年に最も多くのお金を失った「億万長…
  • 10
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中