ロシア軍元将校で反プーチン極右のギルギン、拘置所から大統領選に決死の出馬表明──「第2のプリゴジン」の運命か
New election rival spells bad news for the Kremlin
英オックスフォード大学所属で冷戦後の旧ソ連と東欧諸国の専門家であるブラド・ミフネンコは本誌に対し、ギルキンは、ロシア政府は自分の名前が候補者リストに載るのを何としても阻止しようとすることを予想していると述べた。
「ギルキン出馬の表向きの目的は、有権者の10~15%を占める極右に訴えることだ。極右は、ウクライナを屈服させて、さらにポーランドに進軍することができないロシア軍の『無能ぶり』と『腐敗』を非難している」
だがギルキンの真の狙いは「自分の身を守ることだ」とミフネンコは言う。「ロシア政府を怖がらせて、『プーチンの再選まで口をつぐんでいれば起訴を全て取り下げてやる』と言わせることだ」と述べた。
「ギルキンは最近、拘留中に健康状態が急速に悪化したと訴えている。9月後半には、拘留施設で殴られて血を流し、目の周りにあざが出来て鼻はひどく腫れているか骨折した様子の屈辱的な写真が、ロシア政府のプロパガンダを発信するメディアに流出した」と、ミフネンコは言う。「だからギルキンには、自分の命の危険を心配する十分な理由がある。大統領選への出馬は彼にとって、大勢の人の注目を集めて最悪の事態を避けるための方策の一つだ」
第2のプリゴジンか
ギルキンは8月にテレグラムで、自分がプーチンよりも優れた候補者である6つの理由を挙げ、プーチンは国を率いるにはあまりに「寛容」で「人を信じすぎる」と指摘。「軍務に関しては私の方が現大統領よりも有能だ」と主張していた。
ウクライナ戦争を公然と批判していることで、ギルキンはロシアの傭兵組織「ワグネル」の創設者だったエフゲニー・プリゴジンと比較されることが多かった。プリゴジンは6月24日にロシア軍の上層部に対する反乱を企てたものの失敗。その数週間後、プライベートジェットの墜落によって死亡した。
プリゴジンは反乱を率いる何カ月も前から、ロシア軍の上層部や、彼らによるウクライナ戦争への対応ぶりを非難していた。従ってその墜落死は、暗殺の憶測を呼んだ。ロシア政府は、プリゴジンがプーチンの命令によって殺害されたという憶測は「真っ赤な嘘」だと主張した。