最新記事
韓国政治

窮地の与党が頼るのは、全羅道育ちの「青い目の韓国人」医師...若手造反を食い止める「特効薬」になるのか?

To Heal Ruling Party Rifts

2023年11月14日(火)12時55分
イ・ウヌ(ジャーナリスト)

印は手始めにジェンダー平等に背を向ける尹に軽い一撃を食らわせた。定員13人の革新委員会に7人の女性委員を起用したのだ。

尹は女性閣僚のクォータ制を廃止し、政府組織の改編で「女性家族省」の廃止を目指すなど反フェミニスト政策を掲げてきた。女性票の獲得を目指すなら、そうした政策の見直しも必要だ。

印は尹の側近にも容赦なく矛先を向け、来年の総選挙には出馬を控えるか、激戦が予想されるソウルの選挙区から出馬するよう提案している。特権を貪ってきた尹の取り巻きに揺さぶりをかける考えを隠す気はないらしい。

そのほか議員の活動費の削減や実績調査で評価が低ければ党の公認を取り消すなど、必要性は分かっていても、議員たちがやりたがらない「痛みを伴う改革」も実施する構えだ。

印の解決策は簡潔にして明快。尹に忠実かどうかではなく、実力のある人材を採用する、というものだ。

新党結成は悪夢の展開

印が取り組むべき難題の1つは運動方針などをめぐって尹と対立した国民の力の李俊鍚(イ・ジュンソク)前代表との関係修復だ。

李は過去に実業家から事業優遇の見返りに性接待を受けたという疑惑が浮上し、昨年7月に党員資格を停止され、代表の座を追われた。本人は疑惑を全面的に否定している。

李によると、代表の座を自主的に降りれば、捜査を中止して大統領特使として外国に赴任させると党幹部から内々に持ちかけられたという。こうした尹政権のやり方は80年代の軍事独裁政権と同じだと、李は告発。党員資格の停止を24年1月まで延長された。

権力闘争は終わったかもしれないが、国民の力はその影響に苦しんでいる。若い男性有権者の間で人気の高い李は、昨年3月の大統領選をはじめ、同党の票集めの原動力となった。

李が党から処分を受けると、彼の支持層が一斉に党から離れた。支配的な尹を批判する李の支持基盤は拡大し、今では尹に幻滅した人々をも取り込んでいる。

10月16日に国会で記者会見を行った李の率直な発言は、一層冷ややかなものだった。李は、尹政権がゆがんだイデオロギーにのみ込まれ、尹による党支配を固めることに必死になっていると非難した。

「党は大統領に従属する組織ではないということが、そんなに難しいことなのか」と李は問いかけた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

再送-ブラジル南部洪水の死者100人に、さらなる雨

ビジネス

景気動向一致指数、3月は前月比2.4ポイント改善 

ワールド

印ヒーロー・モトコープ、1─3月期は18.3%増益

ビジネス

中国・碧桂園、元建て債利払いできず 猶予期間内の履
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必要な「プライベートジェット三昧」に非難の嵐

  • 3

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 4

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 5

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食…

  • 6

    この夏流行?新型コロナウイルスの変異ウイルス「FLi…

  • 7

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽…

  • 8

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 9

    ロシア軍兵舎の不条理大量殺人、士気低下の果ての狂気

  • 10

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グ…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 8

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 9

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 10

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中