【スクープ】中国のAI研究者に米政府が3000万ドルを渡していた...朱松純の正体、あの「千人計画」との関係
US Funded Top Chinese Scientist
学術的な研究を通じた技術流出の規模を金額に換算するのは難しい。それが軍事面や経済面に及ぼす影響は、かなり時間がたってからでないと分からないからだ。
センター・フォー・リサーチセキュリティー&インテグリティのストッフは、「朱のケースはこの問題の複雑さを示す典型的な例」だと指摘する。
「彼はアメリカにとって極めて重要なAI分野の専門家で、だからこそ国防総省などから多額の助成金を受け取ってきた」が、その巨額の投資に見合う利益があったかどうかは疑問だ。
なぜなら「朱はその後、中国で研究所や企業を設立し、そこに自分の育てた大学院生やポスドク研究員を集めている」からだ。
米シンクタンク「安全保障・新興技術センター」によると、アメリカで学んだ後、この数年で中国に帰国したAI専門家はほかにもいる。
例えばマイクロソフトの元執行副社長ハリー・シャム(中国名は沈向洋〔シェン・シアンヤン〕)や、カリフォルニア大学バークレー校など米国内の複数の一流大学で教鞭を執った蒲慕明(プー・ムーミン)。
そしてマサチューセッツ工科大学(MIT)で教鞭を執り、00年にコンピューター科学におけるノーベル賞といわれるチューリング賞を受賞した姚期智(ヤオ・チーチー)も中国に帰ってしまった。
中国とのつながりを公表していなかった研究者がアメリカの情報機関や司法当局に目を付けられたケースも、朱が初めてではない。本誌の調べでは、ある連邦政府機関が安全保障について懸念を抱き、22年に国内の6つの大学を調べたところ、どの大学にも3~5件の疑わしい事例があったとされる。
懸念や疑念のある研究プロジェクトに関しては、当局が助成金の返還を求める例も増えている。
スタンフォード大学は10月初め、教授会所属の12人に対する外国からの支援について公表しなかったことを司法省に指摘され、190万ドルの返還に合意した。
本誌の調査によると、この12人には著名なアメリカ人化学者リチャード・ゼアーが含まれていた。彼は筆頭研究者として陸軍、空軍、NSFから380万ドルを得ながら、中国の国家自然科学基金からも資金を受け取っていた。
ゼアーは上海にある復旦大学の「高度人材計画」のメンバーにも選ばれていた。
大物はほかにもいる。
やはりアメリカ人化学者であるチャールズ・リーバー(ハーバード大学教授、休職中)は、中国の「千人計画」との関係について政府当局にウソを述べ、武漢理工大学で有給の職に就きながら申告せず、法律で義務付けられた所得の申告を怠ったとして20年に逮捕され、今年4月に未決勾留期間に加えて罰金を科されている。