【スクープ】中国のAI研究者に米政府が3000万ドルを渡していた...朱松純の正体、あの「千人計画」との関係
US Funded Top Chinese Scientist
20年に中国に戻った後、朱はさっそく「北京通用人工智能研究院(BIGAI)」を創設した。彼は国政助言機関「中国人民政治協商会議」の一員として、最先端のAI研究を「科学技術分野における今後10~20年にわたる国際競争の戦略的最高峰」と位置付ける提案書を出している。
その提案書で朱は、最先端AIの影響力を「情報技術分野における『原子爆弾』に匹敵する」ものと表現し、「わが国が真に普遍的な人工知能の実現をリードできれば国際的な技術競争の勝者となるだろう」と強調している。
彼は昨年12月に設立された「北京大学武漢人工智能研究院」の首席研究員でもある。
匿名を条件に取材に応じた米国防総省の当局者は、朱への助成金拠出の事実をおおむね認めたが、「助成金の対象には複数の研究者が含まれ、朱に渡った分はごく一部」だと語る。「助成金は研究機関に提供されるもので、対象になるのは一個人ではなく複数の研究者」とも付言した。
さらに、助成金を通じた国際協調には世界中から最高の人材を集めることができるなどの「利点」があり、現にアメリカで科学技術系の大学院を修了した中国人留学生の90%は卒業後も米国内に残っているという。
こうしたオープンな研究環境から斬新なアイデアが生まれ、それが自国の利益になっていると述べた。
NSFは過去に、朱が筆頭研究員または共同筆頭研究員とされている13件の研究プロジェクトに総額500万ドル以上の助成金を提供している。対象となったのはコンピュータービジョンや認知機能に関する研究で、AIを人間並みのレベルに引き上げるには必須の技術とされるものだ。
しかし朱の論文や共同研究者、海外での所属先などを調べたところ、利益相反の疑いが生じた。それでNSFとしては、彼の立ち位置に懸念を抱くようになったという。
技術流出は将来に影響
NSFのカイザーによれば、「千人計画のメンバーで正式な所属先や資金源、海外で取得した特許を公表していない研究者」を調べたところ、朱の名前が浮上した。ただし朱の情報を諜報機関や司法当局と共有した時期については明らかにしなかった。
UCLAによれば、朱を筆頭研究員とするプロジェクトに対する助成金の総額は過去15年で約2200万ドルに上る。
同校の広報担当者リカルド・バスケス名義の声明によれば、朱がUCLAを退職したのは中国に戻ってから2年後の22年10月。現在はいかなる団体からの助成金も彼に渡していないという。
だがUCLAのウェブサイトなどによれば、朱は現在も同校の名誉教授であり、AI研究所に在籍する博士課程の学生(その多くが中国人)を指導する立場にある。