【スクープ】中国のAI研究者に米政府が3000万ドルを渡していた...朱松純の正体、あの「千人計画」との関係
US Funded Top Chinese Scientist
朱は統計学とコンピューターの専門家としてUCLAに18年間在籍し、2020年に中国に帰国するまでの約10年間、アメリカ政府の資金提供を受けていた。また国防総省の助成金ウェブサイトによると、帰国後の21年にも2件の助成金が支給されている。
1件は「自律型ロボットや捜索・救助任務など、国防総省にとって重要」な「高次のロボット自律性」の研究で、総額69万9938ドル。
もう1件が「地上および空中のセンサーによる情報収集・監視システム」のための「認知ロボットのプラットフォーム」構築を目的とする研究で52万811ドルが支給されていた。いずれも米海軍研究局からのもので、筆頭研究者に朱の名前がある。
「中国は巨大なシステムを通じて、アメリカ政府の資金で行われた研究から技術やノウハウを引き出している」と警告するのは、非営利団体「センター・フォー・リサーチセキュリティー&インテグリティ」のジェフリー・ストッフ所長。
さらに深刻なのは資金の「二重取り」だと言う。アメリカの公的資金を得ていながら、同じ研究で中国政府の資金も受け取り、中国の利益のために働いているケースだ。
中国の指導部は、人民解放軍が技術や能力においてアメリカやその同盟国の軍隊を凌駕することを目指すと公言している。AIはその核心部分だ。
中国は習近平(シー・チンピン)国家主席の言う「100年に一度の大変革」を追求し、ロシアやイランなどアメリカと対立する国々との関係を強化しつつ、今世紀半ばまでに経済や地政学の分野だけでなく技術面でもアメリカをしのぐ存在になることを目指している。
技術情報移転への危機感
ドナルド・トランプ前米大統領の時代には米中関係が極度に悪化し、アメリカにいる中国人研究者に対する監視の目が厳しくなった。政権末期の20年には、中国軍と関係のある中国人大学院生の入国を禁じている。
現大統領のジョー・バイデンも、中国によるアメリカ製技術の取得を懸念し、AI技術など機密性の高い技術の移転に制限を課している。
この問題の重要性に鑑みて、バイデンは10月30日に大統領令を発し、「アメリカがこの領域で先頭に立って」安全性とセキュリティーの基準を高める意図を表明した。
これに先立ち、10月17日にはアメリカ、カナダ、イギリス、オーストラリア、ニュージーランドの機密情報共有ネットワーク「ファイブ・アイズ」が異例の共同声明を出し、中国への大規模な技術流出に強い懸念を表明している。