中国共産党の「トロイの木馬」と言われる孔子学院はアメリカからほぼ姿を消した?
US Colleges Shut Nearly All China-Funded Confucius Institutes
ノーベル平和賞に対抗する「孔子平和賞」の授与式。2011年の受賞者はロシアのプーチン首相(当時)で、写真は代理の女性(北京) REUTERS/David Gray
<中国のプロパガンダやスパイ活動の拠点として警戒されている中国語教育機関「孔子学院」が次々に閉鎖。ついにアメリカ国内ではほぼゼロになったが>
米政府によれば、全米の大学に設置されていた中国語の教育機関「孔子学院」は、ほぼすべて閉鎖されたという。
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貿易や人権、香港での民主化デモ弾圧など、さまざまな問題をめぐって米中対立が深まるなか、孔子学院に対する監視の目は厳しくなっていた。米議会は孔子学院の設置を受け入れた学校に対する連邦資金援助を制限し、国務省は全米の孔子学院を統括するワシントンの「孔子学院米国センター」を中国政府の機関と認定した。
その結果、米会計監査院(GAO)が最近発表した報告書によると、中国政府がアメリカの大学と提携してキャンパス内に設置した孔子学院の数は、約100から5以下に減少した。
この報告書は、閉鎖の最大の要因として大学が「米政府からの資金援助が受けられなくなる可能性」を挙げており、調査対象となった約100校の大学の61%が、このことが閉鎖の決定に「大いに影響した」、14%が「ある程度影響した」と回答している。
一方、政府からの圧力を閉鎖の大きな原因として挙げた回答は32%、大学の評判への懸念は14%、財務上の懸念は15%、中国政府の政策への懸念は5%だった。
孔子学院が脚光を浴びたのは、提携大学と共同で運営資金を提供する中国政府が中国共産党のイデオロギーを広げるために孔子学院を利用しているという懸念が高まったため。教育を隠れ蓑にした共産党の「トロイの木馬」だというわけだ。
名称を変えて存続か
米議会のマルコ・ルビオ上院議員(共和党、フロリダ州選出)は今年6月、孔子学院を設置した大学に対する国防総省の資金提供を制限する法案を提出。その発表の際に、「中国政府が監督する孔子学院は、中国共産党のプロパガンダでわが国の大学キャンパスを汚染してきた。国防総省がこのような教育機関を支援する理由はない」と声明で述べた。
孔子の名を冠した施設の数はほとんどゼロになったが、中国政府関係者が名前を変えて運営を再開する戦略をとったケースもあると報じられている。
全米学者協会は、2022年6月に発表した孔子学院の閉鎖に関する調査報告書の中で、「孔子学院を完全に排除した大学を、確信をもって特定することはできない」と述べている。
「多くの大学が、さまざまな形で中国のパートナー機関との関係を継続している」と、米会計監査院の国際問題・貿易担当のキンバリー・ジアノプロス部長は本誌に語った。
孔子学院を閉鎖した大学の多くは、学院の開設にあたって提携した中国の大学との関係を維持しており、一部のアメリカの学校では、「孔子学院が提供していた内容に匹敵する」中国語や中国文化プログラムを今でも提供している、と彼女は付け加えた。