メスと交尾するためならその子供を食べてしまう...... オスのツキノワグマに装着したカメラがとらえた衝撃映像
クマは起きている時間の大部分はひたすらボーっとしている
ところで、首輪はいつの間にか外れてしまうこともある。最初に取り付けた最も古いカメラ付きタイプの首輪は、故障したのか電波を発することもなくなり、どこにあるのかわからなくなってしまったことがある。結局、調布飛行場から小型飛行機を飛ばして探し回る羽目になったのだが、見つからずじまいだった。
すっかり諦めていたころ、奥多摩でシカの調査をしている調査員から、首輪を拾ったという連絡をもらった。最初の調査から2年が過ぎたころである。時間は経っていたがデータは無事に取り出すことができた。
このように、回収するのがひと苦労のカメラ付き首輪だが、回収できてもがっかりすることが多い。取り付けた直後にレンズに泥が付いたり、落ち葉が貼りついたり、水滴が付いたりすると、ずっとブラックアウト状態で何を撮っているのかわからないのだ。
まともに撮影できていても半分ぐらいの動画は真っ暗だったりもする。穴に入っているからではない。どうやら地面に突っ伏して寝ているらしい。
「おや? 急に明るくなって画面が青くなったぞ」
そんなときはたぶん寝返りを打ったのだろう。あおむけで寝ているのか、空が見えることもある。
とにかく、クマがゴロゴロダラダラしてばかりいることだけはよくわかった。起きている時間の大部分はひたすらボーッとしていて、さっぱり何をしているのか見当がつかない。
機械が故障する原因はオス同士のケンカ
ハイビジョンカメラで撮影できるのは十数時間。ほとんどが寝てばかりなのは、取り付けて回収する手間を考えると実にもったいない。というわけで、最近ではこの撮影できる尺をうまく有効利用できるように工夫している。例えば、30分に1回、15秒ずつ撮影するとか、朝の6時から夕方の6時の間の、00分と30分に15秒ずつ撮るなどの設定をして、尺を無駄にしないようにするわけだ。
また、クマを捕獲しやすい時期は6〜7月だが、秋の行動を見たい場合はカメラを止めておいて9月から撮影できるように設定することもある。
しかし、1回の撮影時間が短すぎると、それはそれでもどかしいこともある。ちょうど撮影しているときにほかのクマとケンカを始めて、「おおっ」と手に汗握ったところで映像が途切れて、次の録画にはもう相手がいないということもしょっちゅうだ。
もっと長時間撮影できればいいのにと思うが、そこは今後の技術革新に期待したい。
ちなみに、「クマに付けても故障しやすいのではないか」というメーカーの忠告は今のところはずれている。特にオスはケンカをするので、相手に機械を咬まれて故障することが多いのだが、奇跡的に私たちが使うカメラ付き首輪は故障知らずだ。
カメラ付き首輪を用いた調査のノウハウはずいぶん蓄積できてきた。回収率も6割から7割でGPS首輪が出始めたころを考えれば驚異的な数字になってきている。そして、この映像によって新発見が相次ぐのであった。