【MVP記念】100年の歴史に残る2023年の大谷翔平、その軌跡と舞台裏――地元紙の番記者による独占レポートを全文公開
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しかし負担は大きかったのだろう。タイガース戦後には初めて疲労を口にし、その後の数週間は体の節々で起きるけいれんに悩まされた。チームは休養を提案したが、大谷は試合に出続けた。
8月には一度、登板予定を回避したいと申し出た。それでも同月23日のシンシナティ・レッズ戦には予定どおり登板した。しかし2回途中で降板。その日のうちに検査すると右肘の内側側副靭帯の損傷が判明し、再び手術を余儀なくされた。
彼は投げるべきではなかったのか、エンゼルスは彼を止めるべきだったのか。大谷はしばらく報道陣を避けていたが、代理人のネズ・バレロが過熱する議論にクギを刺した。
「彼の体は限界に来ていた、そのことに周囲の人間が気付くべきだったという議論があるが、そういう問題じゃない」。バレロはそう断言した。
周囲の関係者の目には負傷で落ち込んでいるように見えた大谷だが、すぐに指名打者としての役割にエネルギーを集中させた。来シーズンは投げられないと知ったわずか数時間後、大谷は打者としてチームのラインアップに名を連ねていた。
「彼の精神力の強さと野球に対する情熱の証しだ」と、今夏に1カ月だけチームメイトだったベテラン投手ルーカス・ジオリト(現クリーブランド・ガーディアンズ)は言う。
「ショーヘイは献身的で、何よりもチームの勝利に貢献するためにプレーする。彼がけがをして何日か休んでも、誰も驚いたり怒ったりはしなかっただろう。でも彼は『OK、じゃ、これからは打つほうで』と言ったんだ。本当に特別な男だよ」
その数週間後、大谷に再び試練が訪れた。バッティング練習中に右脇腹を痛めたのだ。復帰を目指すも痛みは引かず、11試合連続の欠場。9月16日、シーズン終了まであと2週間というタイミングで残り試合を全て欠場することが決まった。
「ショーヘイはプレーすることが大好きだ」と、エンゼルスのペリー・ミナシアンGM(ゼネラルマネジャー)は語る。「メジャーの選手でいるのは当たり前のことではなく、毎日の努力、献身、真摯な姿勢が必要だと彼は自覚している。毎試合出場して、チームやファンのためにプレーしたいと思っている」