アメリカはなぜ、ガザ地区の病院爆発はパレスチナ側の責任と断定したのか
Why U.S. Intel Says Israel Did Not Attack Gaza Hospital
イスラエル軍によると、パレスチナ側のハマス、イスラム聖戦のロケット弾はガザ地区に落ちる割合が増えていた IDF
<イスラエル空軍が、自国領内に向けて発射されたロケット弾が病院の駐車場に落下したことを示す画像を公開>
イスラム過激派組織ハマスが実効支配するパレスチナ人自治区にあるアハリ・アラブ病院で10月17日に起きた爆発は、イスラエル軍の空爆によるものではないと、米情報機関は結論づけた。当初はこの爆発で市民約500人が死亡したと伝えられたが、複数の米当局筋は、これも誤報だとみている。
ガザの保健当局は17日、爆発による死者は「少なくとも500人」に上ると発表。ハマスはイスラエルの攻撃による爆発であることを示す証拠を公開すると約束した。
だが、米国防総省情報局(DIA)の高官は「イスラエルは病院を攻撃していない。それはわれわれが知り得た事実だ」と、本誌に語った。「画像と(傍受した)通信は、ガザ地区内部から発射されたロケット弾が病院そのものではなく、近くに着弾したことを示している」
一方、この爆発の分析を行っている米空軍の情報将校は「われわれは死者数を把握していない」と述べた。「イスラエル当局も同様で、現時点では明確な数字は不明だが、わが国とイスラエルの情報機関はどちらも、せいぜい2、30人とみている。私はこれを悲劇とは言わない。小さな被害を極端に誇張し、あからさまな虚偽情報を流すのはハマスのお家芸で、これもその一例だ。責任を問われるべきはパレスチナ側で、イスラエルではない」
国際世論の風向きが一変
本誌が取材した当局者やアナリストは口をそろえて、この事件をきっかけにハマスが始めた戦争に対する国際社会の見方や議論のトーンが根底的に変わったと指摘した。当初はハマスの奇襲攻撃の衝撃が人々の関心をさらっていたが、病院爆発でパレスチナ人が長年耐えてきた苦難が注目されるようになった、というのだ。
「ハマスが仕掛けた戦争に関するあらゆる事柄、イスラエル軍のガザへの地上侵攻の可能性から空爆のペースまで、全てに対する国際世論の風向きが、今や大きく変わろうとしている」と、米情報機関の高官は話した。
そうしたなか、イスラエル空軍(IAF)は、自分たちの攻撃ではないことを示す証拠として、ドローン(無人機)で撮影した画像を公開した。それらの画像を基に、IAFは病院の近くにあるハマスとは別のイスラム過激派組織「パレスチナ・イスラム聖戦機構」の拠点からイスラエル領内に向けて約10発のロケット弾が発射され、うち1発ないし数発が技術的な「ミス」で、病院の駐車場に落下して爆発したと分析。公開された中には、飛び散った砲弾の破片が病院の建物に損傷を与えたことを示す画像もある。
IAFはまた、空爆であれば爆撃地点に大きな穴が開いているはずだが、画像にはそんなものは映っていないし、付近の建物が巻き添え被害を受けた形跡もないと指摘した。「病院の隣の建物は無傷だ。これは、われわれがこのエリアに爆弾を投下していないことを示すさらなる証拠だ」