ハマスに続きイスラエルを攻撃するレバノンの武装勢力「ヒズボラ」とは何か
パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスとイスラエルが戦闘状態に入ったことを受けて、レバノンの親イラン組織ヒズボラがこの数日、イスラエルと国境付近で砲火を交わし、紛争拡大の恐れが高まっている。写真は4月、ベイルート近郊で、指導者ナスララ師の発言を聞くヒズボラのメンバー(2023年 ロイター/Aziz Taher)
パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスとイスラエルが戦闘状態に入ったことを受けて、レバノンの親イラン組織ヒズボラがこの数日、イスラエルと国境付近で砲火を交わし、紛争拡大の恐れが高まっている。
ヒズボラについて起源や戦闘能力、影響力など基本情報をまとめた。
ヒズボラの起源
イラン革命防衛隊がレバノン内戦(1975─90年)さなかの1982年に創設した。イランは79年のイスラム革命を他の中東諸国に広げようとしており、ヒズボラ創設はこの一環で、82年のイスラエル軍によるレバノン侵攻に対抗する目的もあった。
宗派がイランの主流と同じイスラム教シーア派で、レバノンのシーア派を対象に勧誘活動を行った。当初は日陰的な一派にすぎなかったが、その後レバノン政府に大きな影響力を持つ武装勢力に成長。米国など西側諸国の一部からテロ組織に指定されている。
戦闘能力
レバノン内戦後、他のグループが武装解除したのに対し、ヒズボラはシーア派が多数を占めるレバノン南部を占領していたイスラエル軍と戦うために武器を保持し続けた。長年にわたるゲリラ戦後の2000年にイスラエルは撤退した。
ヒズボラが軍事力の充実ぶりを見せつけたのは2006年。イスラエルに侵入して兵士2人を誘拐し、他の兵士も殺害した後、イスラエルと5週間にわたり交戦した。
ヒズボラはこの紛争中、イスラエルに数千発のロケット弾を撃ち込み、レバノンで1200人、イスラエルで158人が死亡した。レバノン側の死者の大多数は民間人で、イスラエル側はほとんどが兵士だった。
その後はイランと親密な関係にあるシリアに派兵され、アサド大統領が主導するイスラム教スンニ派の反体制勢力との戦闘を支援し、勢力を伸ばした。
ヒズボラは、精密ロケットや無人機などの兵器を備え、イスラエル全土を攻撃できると豪語している。また、指導者ナスララ師は2021年、10万人の戦闘員がいると述べている。
イランから武器と資金の提供を受けており、米国はイランからの資金供与が最近では毎年数億ドルに上ると推定している。