最新記事
中東

ハマスに続きイスラエルを攻撃するレバノンの武装勢力「ヒズボラ」とは何か

2023年10月17日(火)18時27分
ロイター

今回のイスラエルとハマスの紛争における役割

ガザを実効支配するハマスや、イランが支援する他のパレスチナの過激組織「イスラム聖戦」と深いつながりを持っている。

ハマスの武装集団がガザからイスラエルに侵入して1300人を殺害した7日には、「パレスチナの抵抗勢力の指導者と直接連絡を取っている」と表明。それ以来、イスラエルと何度も国境を挟んで銃撃戦を交わしている。

一方、イスラエル首相の安全保障政策顧問ツァヒ・ハネグビ氏は14日、ヒズボラの敵対行動は抑制的なようだと述べ、レバノンの国家崩壊につながるような行動をとらないよう警告した。

中東地域での影響力

ヒズボラは中東全域でイランが支援する他のグループを鼓舞し、支援する存在となってきた。イラクでは武装グループを訓練するとともに戦闘にも加わっている。

サウジアラビアによると、ヒズボラはイエメンでも親イランのフーシ派を支援し、戦闘を行ってきた。ヒズボラはこれを否定している。

レバノンでの影響力

レバノン国内での影響力を支えているのは高性能の兵器と、ヒズボラがイスラエルからレバノンを守っていると主張する多くのシーア派支持者の存在だ。

一方、反ヒズボラ政党は、ヒズボラが国家を弱体化させ、一方的にレバノンを武力紛争に引きずり込んでいると非難している。

レバノンにはヒズボラ出身の閣僚や国会議員がいる。

レバノンのハリリ元首相殺害事件を受けてシリアがレバノンから軍を撤退させた後の2005年にヒズボラは国内で政治的な影響力を拡大した。この事件については国連が支援する裁判所がヒズボラのメンバー3人に有罪判決を下している。

2016年には親ヒズボラの政治家ミシェル・アウン氏が大統領に就任。その2年後にヒズボラとその同盟政党が議会で過半数の議席を握った。2022年に議席は過半数を割り込んだが、ヒズボラは引き続き政治的に大きな影響力を行使している。

西側を標的に攻撃か

レバノンの治安当局者や欧米の諜報機関によると、ヒズボラとつながりのあるグループが1980年代に欧米の大使館などを狙った自爆攻撃や誘拐を行った。

米国は1983年にベイルートの米海兵隊施設が襲われて兵士241人が死亡した自爆攻撃や、同年に米国大使館が自爆攻撃を受けた事件はヒズボラによるものだと主張している。1983年にはベイルートにあるフランスの軍施設も自爆攻撃を受け、58人が死亡した。

ヒズボラはこうした事件への関与を否定している。

欧米諸国の見解

米国など欧米諸国はヒズボラをテロ組織に指定している。サウジアラビアなど中東湾岸のアラブ諸国も同様だ。

欧州連合(EU)はヒズボラの軍事部門をテロ組織に指定する一方、政治部門についてはテロ組織に指定していない。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2023トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

SDGs
2100年には「寿司」がなくなる?...斎藤佑樹×佐座槙苗と学ぶ「サステナビリティ」 スポーツ界にも危機が迫る!?
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

26年サッカーW杯、低調な米国観光業に追い風 宿泊

ワールド

米、ウクライナに領土割譲含む紛争終結案受け入れ要求

ワールド

ポーランド、最後のロシア総領事館閉鎖へ 鉄道爆破関

ビジネス

金融規制緩和、FRBバランスシート縮小につながる可
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、完成した「信じられない」大失敗ヘアにSNS爆笑
  • 4
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 5
    「これは侮辱だ」ディズニー、生成AI使用の「衝撃宣…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    衛星画像が捉えた中国の「侵攻部隊」
  • 8
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 9
    ホワイトカラー志望への偏りが人手不足をより深刻化…
  • 10
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 9
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中