ハマスに続きイスラエルを攻撃するレバノンの武装勢力「ヒズボラ」とは何か
今回のイスラエルとハマスの紛争における役割
ガザを実効支配するハマスや、イランが支援する他のパレスチナの過激組織「イスラム聖戦」と深いつながりを持っている。
ハマスの武装集団がガザからイスラエルに侵入して1300人を殺害した7日には、「パレスチナの抵抗勢力の指導者と直接連絡を取っている」と表明。それ以来、イスラエルと何度も国境を挟んで銃撃戦を交わしている。
一方、イスラエル首相の安全保障政策顧問ツァヒ・ハネグビ氏は14日、ヒズボラの敵対行動は抑制的なようだと述べ、レバノンの国家崩壊につながるような行動をとらないよう警告した。
中東地域での影響力
ヒズボラは中東全域でイランが支援する他のグループを鼓舞し、支援する存在となってきた。イラクでは武装グループを訓練するとともに戦闘にも加わっている。
サウジアラビアによると、ヒズボラはイエメンでも親イランのフーシ派を支援し、戦闘を行ってきた。ヒズボラはこれを否定している。
レバノンでの影響力
レバノン国内での影響力を支えているのは高性能の兵器と、ヒズボラがイスラエルからレバノンを守っていると主張する多くのシーア派支持者の存在だ。
一方、反ヒズボラ政党は、ヒズボラが国家を弱体化させ、一方的にレバノンを武力紛争に引きずり込んでいると非難している。
レバノンにはヒズボラ出身の閣僚や国会議員がいる。
レバノンのハリリ元首相殺害事件を受けてシリアがレバノンから軍を撤退させた後の2005年にヒズボラは国内で政治的な影響力を拡大した。この事件については国連が支援する裁判所がヒズボラのメンバー3人に有罪判決を下している。
2016年には親ヒズボラの政治家ミシェル・アウン氏が大統領に就任。その2年後にヒズボラとその同盟政党が議会で過半数の議席を握った。2022年に議席は過半数を割り込んだが、ヒズボラは引き続き政治的に大きな影響力を行使している。
西側を標的に攻撃か
レバノンの治安当局者や欧米の諜報機関によると、ヒズボラとつながりのあるグループが1980年代に欧米の大使館などを狙った自爆攻撃や誘拐を行った。
米国は1983年にベイルートの米海兵隊施設が襲われて兵士241人が死亡した自爆攻撃や、同年に米国大使館が自爆攻撃を受けた事件はヒズボラによるものだと主張している。1983年にはベイルートにあるフランスの軍施設も自爆攻撃を受け、58人が死亡した。
ヒズボラはこうした事件への関与を否定している。
欧米諸国の見解
米国など欧米諸国はヒズボラをテロ組織に指定している。サウジアラビアなど中東湾岸のアラブ諸国も同様だ。
欧州連合(EU)はヒズボラの軍事部門をテロ組織に指定する一方、政治部門についてはテロ組織に指定していない。