韓国の高齢化率が日本を超える日は近い......少子高齢化の深刻な現実
ソウルの公園で中国将棋を指す人々 (2019年)REUTERS/Kim Hong-Ji
<韓国の高齢化問題は急速に進行しており、今後の数年で世界で最も高齢の国となる見込みだ。この高齢化に伴い、育児施設の減少や高齢者福祉の不足が社会的な課題となっている......>
韓国で少子高齢化問題が再燃している。2022年の合計特殊出生率は0.78で、23年4月〜6月期には0.7にまで減少、年内に0.6台となる懸念が現実味を帯びてきたのだ。
カリフォルニア大学法科大学院のジョアン・ウィリアムズ名誉教授は「これほど低い出生率は聞いたことがない」「大韓民国は完全に終わった」と話す。
対策の歴史とその効果
少子高齢化が進むと総人口に占める生産年齢人口が少なくなって経済環境が悪化する。加えて、オックスフォード大学のデービッド・コールマン名誉教授は、韓国が「人口消滅国家第1号」になると警告する。
経済開発協力機構(OECD)加盟国で合計特殊出生率が1.0を下回っているのは韓国だけである。先立って少子高齢化が社会問題となった日本は2005年に史上最低の1.26まで落ち込みながらも2015年には1.45まで回復した。2022年はふたたび1.26まで落ち込んだが、コロナ禍による婚姻数の急減が一因とみられる。
韓国政府は少子高齢化が社会問題として浮上した2005年、当時の盧武鉉政権が「低出産・高齢社会基本法」を制定して育児期の短時間勤務制度を導入した。続く李明博政権は一定規模以上の企業に保育施設の設置を義務付け、朴槿恵政権も0歳児から5歳児を対象に保育施設を無料で利用できる無償保育を実施した。また、文在寅政権が児童手当の導入や父親の育児参加を促進するなど、2006年から21年の15年間に280兆ウォン(28億円)を投じたが、出生率は下がる一方だ。
尹錫悦大統領は今年3月28日に主宰した低出産高齢社会委員会で「失敗原因をしっかりと突き止めなければならない」と指摘した。大統領が同委員会を主宰したのは朴槿恵政権時以来7年ぶりである。
韓国政府は15年以上にわたって子を持つ親の子育て環境を整えてきたが、既婚女性の出産率は2.0を超えている。結婚しない若者の増加が問題なのだ。
雇用環境と若者の結婚
若者が結婚しない最大要因は雇用環境といってよい。20代の就業者377万9000人のうち、141万4000人(37.4%)が非正規労働者。つまるところ不安定な雇用が結婚を阻んでいるのだ。
職場内の性差別も出生率低下の一因だ。女性の大学進学率は男性を上回り、20代女性の就業率も男性を上回るが、30代から50代女性の雇用率は男性よりはるかに低い。競争が激しい韓国で出産はキャリアの断絶に繋がるだけでなく、職場を追われることもある。高学歴の女性ほど苦労して得た地位や収入を出産によって失いたくないと考える。
結婚しない女性が子供を産むことはない。