最新記事
韓国

韓国の高齢化率が日本を超える日は近い......少子高齢化の深刻な現実

2023年10月16日(月)19時11分
佐々木和義

高齢者の増加と施設不足

高齢化も深刻だ。2022年の韓国の高齢化率は17.5%で、超高齢社会の日本(29.1%)より低いが、2025年に20.6%に達し、2045年には日本を抜いて世界1位の高齢国家になるとみられている。

少子高齢化の影響で育児施設が大幅に減って高齢者施設が増えているが、十分とは言い難い。育児施設は2017年の4万軒余から2022年は約3万900軒まで5年間で4分の1が閉鎖した。児童数の不足から閉校した小中高校も少なくない。

一方、17年に7万6000軒だった老人介護施設や専門病院、高齢者福祉機関等の高齢者施設は22年には8万9643軒と18%増えたが、有料老人ホームや高齢者住宅は足りていない。

韓国の65歳以上人口は927万人。2022年時点の高齢者向け住宅は韓国全土で39か所、8840世帯にとどまっている。日本は65歳人口3600万人に対して1万6724か所、63万4395人が入居する。

ソウル市江南区にある健康管理施設やフィットネスセンター、レジャー文化施設などを備えたシニアタウン(老人福祉住宅)は、いま申し込んでも入居まで4年以上、待たなければならないという。今年3月に賃貸分譲を行ったソウル市江西区のシニアタウン「VLルウェスト」の平均競争率は19倍、なかには200倍を超えた部屋もあった。

貧困と年金の問題

高齢者の貧困はさらに深刻だ。韓国はOECD加盟国で唯一、65歳以上の相対的貧困が4割を超えている。韓国は20年以上、年金に加入すると65歳から国民年金を受給できるが、2021年の需給率は64.9%で平均受給月額は58万ウォン。単身者の老後適正生活費162万ウォンには程遠く、夫婦で受給しても夫婦の老後適正生活費253万ウォンの半分にも満たない。

「2022年5月 経済活動人口調査高齢者付加調査」によると、55~79歳の68.5%が「働きたい」と回答、1番の理由は「生活費の補填」だった。

韓国は2016年から60歳定年制が義務化されたが、22年度の調査による平均退職年齢は49.3歳で、退職事由は事業不振による休・廃業が最も多く、勧奨退職が続いている。定年前に退職を余儀なくされた人が少なくない。

韓国中央銀行の李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁は大韓商工会議所済州フォーラムの講演で、韓国経済は日本の後追いになるのではないかという質問に「日本は豊かな老人、韓国は金のない老人」と回答した。

15歳から64歳の生産年齢人口100人が扶養する幼年者と高齢者を合わせた総扶養比は、2020年の39.9人から2028年は50人、2040年には79.5人になるとみられており、保健福祉部は2055年には年金が枯渇するという見通しを発表した。官民挙げて有効な対策を打ち出さない限り、韓国はまさに終わってしまうだろう。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 10
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中