最新記事
中東

イスラエルの風光明媚な農場キブツが地獄に...... ハマスの襲撃受けた集落の惨状

2023年10月11日(水)21時08分
ロイター

キブツのフェンスを突破

イスラエル国防軍は10日、海外の報道機関をキブツに案内した。焼け落ちて廃墟となった家屋が並び、通りには住民や武装勢力の遺体、焼け焦げた車、壊れた家具やその他の残骸の山が散らばっていた。

イスラエル兵はまだ住宅に爆発物が仕掛けられていないか確認中で、クファル・アザ・キブツでの死者数は10日夕方時点では公式に発表されていない。

軍の報道官は、少なくとも数十人の住民がこの攻撃で死亡したと述べた。戦闘が完全に終わったのは9日の夜遅くで、軍はまだ一連の出来事の経緯を正確に把握していないと付け加えた。

報道官によると、ハマスの武装集団はおそらく土工機械を使ってキブツのフェンスを突き破り、数十人がそこから侵入できるようにした。このほか、オートバイやハンググライダーで到着した武装集団もいたという。ベルブ少将は、約70人が同キブツに侵入したと明らかにした。

ある匿名の予備兵はロイターに対し、カラシニコフ自動小銃や携行式ロケット弾、手りゅう弾で武装した集団がキブツに波状攻撃を仕掛けてきたと話した。

周辺の路上には、黒いシャツにカーキ色のズボンをはき、軍用ベストを着た武装勢力のメンバーの遺体が横たわっていた。拳銃を手にしたままの者もいた。

最悪の悪夢

シュワルツマンさんは7日の午前6時半ごろ、ロケット弾のごう音で目を覚ました。その1時間後、キブツの全住人向けに送られた、外に出るのは危険だとのテキストメッセージが届いて、家族とともに自宅の中の防護室に移動したという。

「銃声が聞こえ、軍が救助してくれるまでの21時間、私たちは立てこもった。銃撃や銃声、爆弾や警報が絶えず聞こえ、何が起こっているのかわからなかった。最悪の悪夢だった」と、妻のカレンさんが振り返った。

ヤシの木やバナナの木が植えられ、ベランダ付きの平屋住宅が整然と並んでいたキブツの通りでは、兵士たちがまだ警備を続けていた。

ある家の外には、紫色のシーツに覆われた住人の遺体が横たわっていた。シーツから裸の足がのぞいていて、まるでただ寝ているかのように見えた。枕やその他の身の回りの品が近くに落ちていた。

遠くで銃声と爆発音が聞こえた。上空からはジェット機の音が聞こえ、ガザから煙が上がっているのが見えた。ロケット弾の迎撃を知らせるサイレンが頭上で鳴り響いた。

「ここで見たことを世界に伝えてくれ」。ある兵士が叫んだ。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2023トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

社会的価値創造
「子どもの体験格差」解消を目指して──SMBCグループが推進する、従来の金融ビジネスに留まらない取り組み「シャカカチ」とは?
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米農務長官にロリンズ氏、保守系シンクタンク所長

ワールド

COP29、年3000億ドルの途上国支援で合意 不

ワールド

アングル:またトランプ氏を過小評価、米世論調査の解

ワールド

アングル:南米の環境保護、アマゾンに集中 砂漠や草
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    「何も見えない」...大雨の日に飛行機を着陸させる「…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中