中国経済の「低迷」は終わりが見えず...それでも、習近平体制は「ビクともしない」と言えるワケ
NOT ABOUT TO GO AWAY
国内では独裁体制を固めている(第19回共青団大会、23年6月) XINHUA/AFLO
<西側メディアは中国経済が「長期停滞」に入っていると騒いでいるが、習近平体制の崩壊に直結する可能性は低い>
中国経済は低迷中だ。2023年上半期のGDP伸び率を見ると、中国政府が控えめに設定した年間目標の達成すら危ぶまれる。こうした状況をにらんで、西側メディアは一斉に騒ぎ立てている。いわく、中国経済は「破滅のループ」に突入した。習近平(シー・チンピン)国家主席がどうあがいても、この流れは変えられそうにない......。
この手の予想は目新しいものではない。01年にはアメリカのある学者が10年以内(つまり11年までに)中国の現体制は崩壊すると予測した。この学者はその後予測を1年先に延ばしたが、習体制はビクともしなかった。20年にABCニュースのウェブサイトに掲載された記事によると、中国共産党は一党独裁の政党としてはもはや終末期を迎えているそうだ。旧ソ連・東欧諸国の運命が示すように、共産党支配の国々はおおむね70年と持たない、というのである。
確かに、中国経済はデフレや不動産危機、輸出の不振、若年層の高失業率などに四苦八苦している。政府は借金頼みの成長から質の高い成長に舵を切ろうとしているが、その転換も景気浮揚を妨げているようだ。
そうは言っても、今の状況は毛沢東時代と比べればはるかにましだ。1960~62年には自然災害に失政が重なり、推定3000万人の中国人が餓死した。その後文化大革命中には中国経済は崩壊寸前に追い込まれたが、毛沢東体制は崩れなかった。
アメリカでは有権者の投票行動を左右する最大の要因は経済だ。アメリカの大統領は有権者の支持を失えば政権の座を追われるが、毛沢東の場合はそうではない。共産主義革命を成し遂げたことが国家の指導者としての「正統性」を担保していた。
習の場合は、経済運営の実績に加え、プロパガンダ、強制力、ピラミッド型組織に支えられた専制支配で政権を維持できる。経済が失速すれば国民の評価は下がるにせよ、政権が揺らぐ心配はない。ゼロコロナ政策やゴーストタウンと化した「雄安新区」の開発など、習の肝煎り政策や事業には国民に不人気なものや頓挫したものが山ほどあるが、最高指導者としての習の地位は揺るがない。
2つの支え、つまり経済と政治の両方が同時に崩れない限り、習政権の行方は安泰なのだ。