今さら「従属理論」を持ち出すインドネシアの野心とは?...「グローバルノース」への対抗策「輸出制限」がとても危険な理由
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ジョコは原材料輸出に依存する従来のモデルを拒絶する AJENG DINAR ULFIANAーPOOLーREUTERS
<原材料輸出の制限に踏み切る、ジョコ大統領の危うい皮算用について>
どの国にも経済発展の権利があり、その権利は尊重されねばならない──
5月に広島で開かれたG7サミットに招かれたインドネシアのジョコ・ウィドド大統領はそう語り、いわゆるグローバルサウスの諸国が1次産品(原材料)しか輸出できない現状はおかしい、植民地時代の悪しき慣行は捨てるべきだと強調した。
インドネシアは近年、原材料輸出への依存を徐々に減らす一方、別の形の公正かつ互恵的な国際関係を模索している。
そして、より付加価値の高い産業を育成するため、G7諸国の協力を得たいと考えている。
実際、今のインドネシアはその方向に動き出しており、手始めに2014年に未加工鉱物(ニッケル鉱石を含む)の輸出を禁じ、国内での精錬・加工を義務付けた。
17年に緩和されたが、20年1月にニッケル鉱石が再び禁止に。これにEUが反発し、WTO(世界貿易機関)に異議を申し立てており、EU加盟国以外のG7構成国(アメリカ、カナダ、イギリス、日本)もEU支持の立場だ。
WTOは昨年11月、この件でインドネシアの措置を協定違反とする裁定を下したが、同国は直ちに上訴した。ジョコはスズやボーキサイト、銅なども、今後は鉱石のままの輸出を禁止すると表明している。
どうやらジョコ政権は、第2次大戦後に台頭した「従属理論」を21世紀の今に復活させたいらしい。
この学説はアルゼンチンの経済学者ラウル・プレビッシュらが提唱したもので、途上国は植民地時代から続く世界の政治・経済的システムによって抑圧され、大切な資源が貧しい国から豊かな国へと吸い上げられていると論じた。
プレビッシュは中南米諸国の事例を検討し、価格変動の激しい1次産品の輸出に依存している限り途上国は先進国への「従属」から抜け出せないと論じ、その状況から脱するには国内経済の工業化と多様化が必要だと説いた。
つまり、今の経済システムではグローバルノースが「中心」であり、対するグローバルサウスは「周縁」で非熟練工を酷使し、1次産品を中心部に送り出すのみ。付加価値の高い製品への加工は中心部で行われるから周縁部の開発は進まず、豊かになるのは中心部だけという構造的不均衡が生じる。