「膠着状態」に入ったウクライナ戦争の不都合な真実...西側の支援はそろそろ限界か?
HOW PEACE TALKS CAN BEGIN
現在進行形のウクライナの反転攻勢の成否については、人によって評価が大きく異なっており、確かなことは不明だが、ウクライナ側が思ったような結果を出せていないことは確かである。また、「資源」の観点からもロシア側が優勢であることも、基本的な共通認識となっているだろう。もちろん、ウクライナに対して欧米が、人的資源を含め、これまで以上の大規模支援を投入できるというなら話は変わってくるが、来年の米大統領選次第では、支援は今後縮小局面に入る可能性もある。
では、ロシア側は今後停戦の機運が高まったときにどのような条件で何を目標として行動するだろうか。まず指摘すべきは、ゼレンスキーとプーチンは互いに並び立たないということ。ゼレンスキーはプーチンとの交渉自体を拒否しており、プーチンはゼレンスキーとの最初の和平交渉の失敗以来、交渉は時間稼ぎとして信を置いていない。つまり、プーチンがいなくなるか、ゼレンスキーがいなくなるかだ。
どちらの可能性がより高いかは、比較的容易に想像できる。ゼレンスキーの支持基盤はプーチンに比べればはるかに脆弱だ。ウクライナでは次の大統領選挙が来年の3月に予定されているが、予定どおりに実施されるかは不明だ。ゼレンスキーは選挙資金の不足を理由に実施の有無を明確にしていない。
もし、公正な選挙が行われれば、落選する可能性も十分あるだろう。ウクライナ国民がゼレンスキーを選んだのは、そもそも彼がロシアと交渉して、14年以来のドンバス紛争を和平に持ち込むことを公約に掲げていたからである。6月の世論調査ではウクライナ国民の大半は領土面での譲歩を支持していないようだが、だからと言ってロシアに勝利するまで戦争を継続するというゼレンスキーが再選されるとは限らない。国民は現実的な見方をしているものだ。
選挙の結果、ゼレンスキーが去るというシナリオがなくても、ロシア側がゼレンスキー政権と交渉を行う可能性は低いだろう。ゼレンスキーを追い落とすために、どこかのタイミングでウクライナへの攻撃を強化することもあり得る。ロシアは、ゼレンスキー政権が崩壊するか、合法的に交代するか、ウクライナに新たな政権が誕生するまで待つだろう。
ウクライナ支援継続は得策か
というのも、ロシア側の認識では、ゼレンスキーは米英の「傀儡」である。ラブロフは、米英を「人形遣い」と呼んでいる。すなわち、ロシア側の大きな戦略目標の1つは、ロシアの安全保障のためにウクライナから米英の影響力を排除することにある。このことは、ウクライナのNATO非加盟、中立化にとって必要不可欠な条件となっている。