最新記事

アフリカ

次々にアフリカ諸国から追い出されるフランス...見透かされる「搾取を続ける宗主国」のダブルスタンダード

French Era Ends in Africa

2023年10月4日(水)18時28分
トム・オコナー(外交問題担当)

二重基準がまかり通る

安全保障政策に苦労している他のサヘル諸国と異なり、バズムの政策は「ある程度まではうまくいっていた」と、パウエルは指摘する。「だからこそ、アメリカとフランスはバズムに大きな信頼を寄せていたのだろう。しかし両国は、ニジェールでの長年にわたる民間と軍の複雑な軋轢、バズムが長い間行ってきた反対派への弾圧、彼が選挙で物議を醸したことなどを無視した。強固なパートナーになるには、基盤が不安定すぎる」

いまバズムは自宅軟禁されているため、アメリカはニジェールの民主主義の回復を求めながらも、軍政との関係構築を模索している。在欧・在アフリカ米空軍のジェームズ・ヘッカー司令官は先日、ニジェール軍政との交渉の結果、ドローンの使用を含むニジェールでの監視・情報収集任務の一部が再開されたことを明らかにした。

米アフリカ軍(AFRICOM)の報道官は「ニジェールにおける米軍の長期的なプレゼンスについて、アメリカはまだ方針を決めていない」と本誌に語った。この報道官はニジェールで再開した任務の詳細については明かせないとしながら、「アメリカはニジェール軍とテロ対策活動は行っていない」と述べている。

一方のフランスでは、外務省報道官がオンライン声明で「アフリカのテロとの戦いを引き続き支援するが、民主的に選出された政権や地域当局の要請がある場合にのみ対応する」と語った。「ニジェールではクーデター後の約2カ月間に、イスラム主義テロによって、それ以前の18カ月間を上回る死者が出ている」

だがフランスのユネスコ大使や外務・人権担当閣外相を務めたラマ・ヤドは、フランス軍の駐留が明確な成果をもたらさなかったことが、反発を加速させた要因の1つだと指摘する。さらに彼女は、アフリカの民主主義に対するフランスの立場には「一貫性がない」とも語る。フランスの政府関係者らは、ニジェールに軍政が成立するとすぐに非難した。だが21年4月にチャドで、当時のイドリス・デビ大統領が反政府勢力への攻撃中に殺害されると、息子のマハマトが選挙を経ずに実権を握ったことについては、あまり批判的ではなかったという。

「人々は何が問題なのかが分かっている」と、ヤドは言う。「ダブルスタンダードがまかり通っており、下手をすれば壊滅的な影響をもたらす」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

加オイルサンド主要生産地に山火事迫る、6000人に

ビジネス

ペトロブラス、CEOが辞意 取締役会に協議要請

ビジネス

米航空業界、今夏の旅客数は前年比6.3%増で過去最

ビジネス

スイスアジア運営のファンド、取締役の個別面談義務化
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 2

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 3

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 4

    アメリカからの武器援助を勘定に入れていない?プー…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 8

    ロシア国営企業の「赤字が止まらない」...20%も買い…

  • 9

    ユーロビジョン決勝、イスラエル歌手の登場に生中継…

  • 10

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中