最新記事
日本社会

今や東京の30代子育て世帯の4割が年収1000万円以上

2023年10月5日(木)11時50分
舞田敏彦(教育社会学者)
子育て世帯

この15年の子育て世帯の収入状況の変化は著しい(画像はイメージ写真) monzenmachi/iStock.

<結婚・出産の経済的ハードルが上がり、中間層の収入レベルでは子どもを持つことが困難になってきている>

昔は、子どもを産むのは働き手の確保という意味合いがあり、低収入層ほど子どもが多い「貧乏人の子だくさん」と言われたりしていた。だが今はそうではなく、子どもはカネのかかる存在だ。20歳過ぎまで何らかの学校教育を受けさせることが一般的になっており、かつ幼少期から各種の習い事をさせる同調圧力も強くなっている。

「子ども1人育てるのに1000万円、2000万円」という試算も聞くが、子どもはすっかり奢侈品になってしまったかのようだ。それは、子育てをしている世帯の年収分布からうかがえる。総務省の『就業構造基本調査』に、夫婦と子の世帯の年収分布が出ているが、2007年と2022年の数値を対比すると<表1>のようになる(親が30代の世帯)。

data231005-chart01.png

30代の子育て世帯は、この15年間で349万世帯から231万世帯に減少した。3割以上も減っていて、未婚化・少子化の傾向がはっきりと表れている。だが目を凝らして見ると、減少率が大きいのは低収入層や中間層であることが分かる。年収300万円台の世帯は、50万世帯から13万世帯へと4分の1に減った。その代わり、年収800万円以上の層は増えていて、1000万円以上の世帯は1.6倍に膨れ上がっている。

2022年で最も多いのは年収500万円台で、次に多いのは600万円台と1000万円以上の層だ。日本全体が貧しくなっているのとは裏腹に、子育て世帯の年収は上がっている。共稼ぎの増加によるものだろうが、300~500万円台といった中間層では結婚・出産が容易ではなくなっていることもある。

結婚・出産の階層的閉鎖性が強くなっているのではないか。教育費の上昇や増税に加え、学生時代に借りた奨学金の返済義務がある人も増えている。そこそこの経済力がなければ、結婚・出産に踏み切れないのは当然だ。

SDGs
使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが「竹建築」の可能性に挑む理由
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏とゼレンスキー氏が「非常に生産的な」協議

ワールド

ローマ教皇の葬儀、20万人が最後の別れ トランプ氏

ビジネス

豊田織機が非上場化を検討、トヨタやグループ企業が出

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 7
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中