最新記事
台湾

台湾総統選に「第4の候補」が乱入...「鴻海」創業者の出馬は勝算ありか、それとも暴走か

Independent’s Impact

2023年9月7日(木)17時26分
ジェイク・レビー
台湾総統選に出馬表明した実業家の郭台銘

郭(中央)が出馬を表明したことで政権批判票が分散するのは確実 AN RONG XUーBLOOMBERG/GETTY IMAGES

<大物実業家の郭台銘が無所属での出馬を表明。「緑vs青」という政治の対立軸はどう変わる?>

台湾で抜群の知名度を誇る実業家の郭台銘(クオ・タイミン、テリー・ゴウ)が8月28日、来年1月の総統選に無所属で出馬することを表明した。鴻海精密工業の創業者である郭は野党・国民党の候補者争いに敗れたものの、同党の公認候補に選出された侯友宜(ホウ・ヨウイー)は支持率低迷にあえいでいる。そのため郭は、出馬を決断したようだ。

72歳の郭はこの数週間、台湾各地で選挙戦の遊説かと見まがうようなイベントを開催してきた。出馬表明を行った後には、総統に当選したなら豪腕経営者としての経験と人脈を生かし、4年の任期中に台湾海峡に「50年の平和」をもたらすと約束した。

郭の出馬表明は、今回の総統選にどのような影響を与えるのか。

緑をシンボルカラーとする与党・民進党は、「民主主義か権威主義か」を選ぶ選挙だと訴える。青がシンボルカラーの国民党は、「戦争か平和か」の二者択一の選挙だと主張する。緑色陣営は台湾アイデンティティーが強く、青色陣営は中国との緊密な関係構築を訴える。

与党・民進党の候補である頼清徳(ライ・チントー)は、これまで政府の要職を歴任してきた。行政院長(首相)を務めた経験があり、現在は副総統だ。対中関係については慎重な現実主義を取りながらも、過去には台湾独立支持と受け取れる発言もしている。

対する国民党の候補となったのが、新北市長として人気があった侯だ。侯は郭を抑えて公認候補の座を勝ち取ったのだが、順風満帆というには程遠い。

国民党は今年、候補者の選出手順を全面的に見直し、予備選を取りやめて党幹部が候補者を選ぶ方式に変えた。予備選で選ばれた候補者が2度も選挙で惨敗したために導入したもので、これで当選の可能性が高い候補者を指名できるとみられていた。ところが、公認候補となった侯は党内で影が薄い。

侯は市長としての人気は高かったが、地方の問題に力を入れ、国政には関与しないとする市長時代の戦略のままでは総統選に勝てるはずもない。台湾が直面している地政学的な最重要課題である中台関係について、台湾がどのような立場を取るのが最善かという論点に、侯は明確なメッセージを打ち出せずにいる。与党が兵役期間を4カ月から1年に延長する方針を打ち出したことも、侯の外交政策のアプローチを迷走させる結果になっている。

自動車
DEFENDERの日本縦断旅がついに最終章! 本土最南端へ──歴史と絶景が織りなす5日間
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

成長戦略の要は賃上げ、最低賃金引き上げに向け5月ま

ビジネス

ノルウェー政府系ファンド、洋上風力発電権益の49%

ビジネス

財新・中国製造業PMI、3月は4カ月ぶり高水準 輸

ビジネス

物価高対応、新たな予算措置は想定せず=赤沢経済再生
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 9
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中