台湾総統選に「第4の候補」が乱入...「鴻海」創業者の出馬は勝算ありか、それとも暴走か
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郭(中央)が出馬を表明したことで政権批判票が分散するのは確実 AN RONG XUーBLOOMBERG/GETTY IMAGES
<大物実業家の郭台銘が無所属での出馬を表明。「緑vs青」という政治の対立軸はどう変わる?>
台湾で抜群の知名度を誇る実業家の郭台銘(クオ・タイミン、テリー・ゴウ)が8月28日、来年1月の総統選に無所属で出馬することを表明した。鴻海精密工業の創業者である郭は野党・国民党の候補者争いに敗れたものの、同党の公認候補に選出された侯友宜(ホウ・ヨウイー)は支持率低迷にあえいでいる。そのため郭は、出馬を決断したようだ。
72歳の郭はこの数週間、台湾各地で選挙戦の遊説かと見まがうようなイベントを開催してきた。出馬表明を行った後には、総統に当選したなら豪腕経営者としての経験と人脈を生かし、4年の任期中に台湾海峡に「50年の平和」をもたらすと約束した。
郭の出馬表明は、今回の総統選にどのような影響を与えるのか。
緑をシンボルカラーとする与党・民進党は、「民主主義か権威主義か」を選ぶ選挙だと訴える。青がシンボルカラーの国民党は、「戦争か平和か」の二者択一の選挙だと主張する。緑色陣営は台湾アイデンティティーが強く、青色陣営は中国との緊密な関係構築を訴える。
与党・民進党の候補である頼清徳(ライ・チントー)は、これまで政府の要職を歴任してきた。行政院長(首相)を務めた経験があり、現在は副総統だ。対中関係については慎重な現実主義を取りながらも、過去には台湾独立支持と受け取れる発言もしている。
対する国民党の候補となったのが、新北市長として人気があった侯だ。侯は郭を抑えて公認候補の座を勝ち取ったのだが、順風満帆というには程遠い。
国民党は今年、候補者の選出手順を全面的に見直し、予備選を取りやめて党幹部が候補者を選ぶ方式に変えた。予備選で選ばれた候補者が2度も選挙で惨敗したために導入したもので、これで当選の可能性が高い候補者を指名できるとみられていた。ところが、公認候補となった侯は党内で影が薄い。
侯は市長としての人気は高かったが、地方の問題に力を入れ、国政には関与しないとする市長時代の戦略のままでは総統選に勝てるはずもない。台湾が直面している地政学的な最重要課題である中台関係について、台湾がどのような立場を取るのが最善かという論点に、侯は明確なメッセージを打ち出せずにいる。与党が兵役期間を4カ月から1年に延長する方針を打ち出したことも、侯の外交政策のアプローチを迷走させる結果になっている。