「男性はカネがなければ結婚できない」日本の時代錯誤のジェンダー観で少子化はさらに進む
これをもとにジニ係数を算出すると、0.553にもなる(計算の方法については、前回の記事「日本の労働者の収入格差は、今やアメリカよりも大きい」を参照)。偏りが大きいとされる0.4を超えており、未婚男性と既婚男性の年収の違いは相当大きい、ということになる。男性にあっては、結婚に際して経済力がモノをいう度合いが高い、ということだ。
同じ方法により、このジニ係数を主要国について試算してみた。カネがない男性はどれほど結婚しにくいかを測る尺度で、「結婚ジニ係数」と呼ぶことにする。<図1>は、7つの国の数値を棒グラフにしたものだ。
結婚ジニ係数は、比較対象の7つの国では日本が最も高い。カネがない男性は結婚できない度合いが最も大きい。男性が一家を養うべき、というジェンダー観が強いためだろう。女性の側は、結婚すると家事や育児をほぼ一手で担うことになり、収入は大きく目減りする。よって、結婚相手の男性に高い収入を求めざるを得ない。だがこのご時世、そういう男性は少ない。
男女平等が進んでいるスウェーデンでは、結婚ジニ係数は小さい。男性の稼ぎのみに依存するのではなく、夫婦二馬力で生計を立てていく展望が持てるためだろう。ちなみに7つの国の結婚ジニ係数は、2019年頃の合計特殊出生率とマイナスの相関関係にある。
未婚化・少子化の進行は、時代錯誤のジェンダー観が生きながらえていることにもよる。「男は仕事」といっても、男性の腕一本で一家を養える時代ではないし、「女は家庭」という考え方は、結婚による損失(逸失所得)を女性に強く意識させる。
令和の時代の若い男女が、結婚をためらう所以だ。
<資料:「ISSP 2018 - Religion IV」、
「ISSP 2019 - Social Inequality V」>