日本の労働者の収入格差は、今やアメリカよりも大きい
日本の収入格差のジニ係数は、世界的に見ると真ん中より少し下の位置 Overearth/iStock.
<日本の収入ジニ係数は、一般的に偏りが大きいとされる値0.4を超え、労働者の収入格差がさらに拡大したことを示している>
世帯の所得格差を示すジニ係数が、2021年では過去最高の水準になったという。ジニ係数とは、国内の富の配分がどれほど偏っているかを数値化したものだ。「人口の上では〇%しかいない富裕層が,国内の富の△%を占有している」という現実が、0.0から1.0までの数値で表される。
興味が持たれるのは、国による違いだ。国際労働機関(ILO)の統計から、有業者の階層別(年収10分位)の収入内訳を国別に知ることができる。2020年の日本のデータを見ると、最も高い階層(第10階層)の人たちが得た年収が、全有業者の年収合算の28.3%を占めている。有業者全体の10%でしかない高所得層が、国内の稼ぎ全体の3割近くをせしめている、ということだ。
<表1>は、10の階層の人数と年収の内訳を示したものだ。
10分位階層なので人数は10%ずつ均等になっているが、年収は違う。最も高い階層(D10)が得た収入が全体の28.3%占める一方で、D1~D5の階層の割合は17.8%でしかない。下半分の人たちの収入合算は、最も高い1つの階層の人たちよりも少ない。少なからぬ偏りといえる。
ちなみにアフリカのウガンダでは、D10の収入割合は77.1%にもなる。有業者の1割でしかない最上位層が、稼ぎ全体の8割近くを占有している。にわかに信じ難いが、こういう国もある。
10の階層の人数と収入の分布のズレは、右欄の累積相対度数をグラフにすることで可視化される。横軸に人数、縦軸に収入を取った座標上にD1~D10の階層のドットを配置し線でつないだものだ。この曲線をローレンツ曲線という。
<表1>の累積相対度数をもとに、2020年の日本の収入ローレンツ曲線を描くと<図1>のようになる。
人数と収入の分布のズレの大きさは、曲線の底の深さ、すなわち色付きの部分の面積で示される。ジニ係数とは、この面積を2倍したものだ。分布のズレが全くない完全平等の場合、曲線は対角線と重なるのでジニ係数は0となる。逆に極限の不平等状態の場合、色付きの面積は四角形の半分となるので、ジニ係数は0.5を2倍して1.0となる。
ジニ係数が0.0~1.0の範囲となるのはこういうことで、各国の現実はこの両端の間に位置している。上図から日本の収入ジニ係数を出すと0.4414となる。一般にジニ係数は0.4を超えると偏りが大きいと言われるので、日本の労働者の収入格差は常軌を逸して大きい、とうことになる。参考までにウガンダの曲線(茶色)も添えたが、この国では曲線の底が深くジニ係数は0.8221にもなる。