最新記事

米ロ国境

中ロ艦船11隻がアラスカ沖に接近、米駆逐艦4隻と対峙 初の大船団に一時緊張

Aleutian islands standoff as U.S. faces off Russian-Chinese Navy in Alaska

2023年8月8日(火)18時25分
ジュリア・カルボナーロ

アラスカ沖にも、P-A「ポセイドン」哨戒機と駆逐艦4隻が出動した(写真は2016年6月、南シナ海)  Peter Hermes Furian-Shutterstock

<合わせて11隻という大規模な船団の接近を受けアメリカは駆逐艦と哨戒機で追跡・監視した>

米ウォール・ストリート・ジャーナル紙は8月6日、ロシアと中国の艦船11隻が先週、米アラスカ沖アリューシャン列島の近くの海域を航行したと報じた。これを受けて、アメリカの駆逐艦4隻とP8哨戒機「ポセイドン」が追跡と監視を行ったということだ。

これほど大規模な船団が米海岸に接近したのは初めてとみられるが、同紙によれば、ロシアと中国の艦船はいずれも、米国の領海に侵入することなく離れていった。

アリューシャン列島は14の大きな島と55の小さな島で構成されており、その大部分はアメリカに属しているが、一部はロシアに属している。同列島とアラスカは、地理的に中国とロシアの両方に近く、中国、ロシアとアメリカの地政学的な対立の影響を受けやすい位置にある。

<マップ>アリューシャン列島と米ロ国境

米北方軍の報道官はウォール・ストリート・ジャーナルに対して、ロシアと中国が合同でアラスカ近辺を巡回していたことは認めたが、艦船の数や正確な位置については明らかにしなかった。

同報道官は声明で、「米北方軍の指揮下にある空軍と海軍が運用する資産が、アメリカとカナダの防衛を確保するための作戦を実行した。(中国とロシアの)艦船による巡回は国際水域内にとどまり、脅威とは見なされなかった」と述べた。

本誌はこの件について、7日に中国とロシアの国防省にメールでコメントを求めたが、返答はなかった。

中ロ合同で太平洋を巡回

ロシア国防省は4日付の報道発表の中で、ロシアと中国の艦船が合同で訓練を行ったと発表。戦術的操縦訓練や通信訓練、さらに互いの艦船の甲板からヘリコプターを離着陸させる訓練が含まれ、また艦船の乗組員らは巡回任務で2300海里超を移動したと明らかにしたが、アリューシャン列島への言及はなかった。

ロシア国営タス通信は7月28日、「ロシアと中国の艦船」が太平洋で合同巡回を実施したと報道。その目的について、「ロシア海軍と中国海軍の協力強化、アジア太平洋地域の平和と安定の維持、沖合の海域の監視、およびロシアと中国の海洋経済活動の対象の警備」だと述べた。

タス通信によれば、中国国防省もこの合同演習が実施されたことを認め、「第三国を対象にしたものでも、現在の国際情勢や地域情勢と関係するものでもない」とコメントした。

アラスカ州選出のダン・サリバン上院議員とリサ・マーカウスキー上院議員は、5日に声明を発表。「数日前からアラスカ軍の指導部と緊密に連絡を取っており、アリューシャン列島の米海域を航行する外国の船舶については、機密扱いの詳細なブリーフィングを受けている」と述べた。

【20%オフ】GOHHME 電気毛布 掛け敷き兼用【アマゾン タイムセール】

(※画像をクリックしてアマゾンで詳細を見る)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

豪賃金、第1四半期は前期比+0.8% 市場予想下回

ビジネス

仏成長率、第2四半期は小幅に 5月に休日多く=中銀

ビジネス

インフレなお高水準、まだやることある=カンザスシテ

ワールド

アルゼンチン中銀、政策金利を40%に引き下げ イン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 2

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 3

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 4

    アメリカからの武器援助を勘定に入れていない?プー…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 8

    ロシア国営企業の「赤字が止まらない」...20%も買い…

  • 9

    ユーロビジョン決勝、イスラエル歌手の登場に生中継…

  • 10

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中