ロシア黒海艦隊、ウクライナ無人艇の攻撃で相次ぐ被害──「大規模反攻への地ならし」と戦争研究所
Russia's Black Sea Fleet Suffers More Problems as Video Shows Tanker Strike
潜水艇が捉えたロシアの大型揚陸艦オレネゴルスキー・ゴルニャク(8月4日、ノボロシスク近海で) Reuters
<大型艦船が大破するのは、昨年春に撃沈された巡洋艦モスクワ以来>
黒海でロシア軍のタンカーが無人艇に攻撃されるようすを捉えた動画がSNSに投稿され、話題になっている。この前日にもロシア軍の大型艦艇が無人艇の攻撃を受けている。
黒海でロシア軍の標的に対する攻撃が相次いでいるのは、ウクライナ軍がこの地域でより大規模な反転攻勢の地ならしをするためだと、米シンクタンクの戦争研究所は指摘する。「ウクライナ軍は、ロシアのより深くを攻撃し、海の標的も取り込んでいる」
ロシアは7月、ウクライナ産穀物の黒海経由での輸出に関する協定から離脱。それ以来、黒海周辺では双方の攻撃が激化している。
SNSに投稿された動画は、アゾフ海と黒海をつなぐケルチ海峡で、無人艇がロシアの石油・ケミカルタンカーを攻撃した際に撮影されたもの。この攻撃により、同海峡にかかるクリミア半島とロシアを結ぶ橋の通行は3時間にわたり遮断された。
ロシア当局は、タンカー「SIG」(乗員11人)が4日午後11時20分頃に攻撃を受けたと明らかにした。ウクライナの英字紙キーウ・ポストが報じたところでは、このタンカーはロシア軍部隊に燃料を補給する任務に就いており、ロシア軍が保有するタンカーの中でも性能はトップクラスだという。
動画は無人艇に搭載されたカメラで撮影されたもので、無人艇が水面ぎりぎりをタンカーに向けて急速に近づいていく様子が捉えられている。そして映像は衝突とともに消える。
この攻撃でタンカーは機関室近くの喫水線あたりに穴が開いた。ロシア当局はメッセージアプリのテレグラムで「無人艇攻撃の結果とみられるが、船は沈んではいない」と述べている。ロシアメディアの報道によれば攻撃によるけが人はおらず、石油の流出もないという。
前日には大型揚陸艇が攻撃で大破
英BBCはウクライナの公安当局者の話として、攻撃には無人艇が使われたと伝えている。一方でウクライナ保安局(SBU)のワシリ・マリュク長官は、ウクライナ側が攻撃を行ったかどうか明言は避けたが、そうした攻撃は「非常に論理的で」なおかつ「完全に合法的」だと述べた。
親ウクライナ派のX(元ツイッター)アカウント「ウォー・トランスレイティッド」はこの動画を「黒海におけるロシア軍タンカーに対する攻撃のすばらしい記録映像。当初は違法な橋に対する攻撃だと勘違いされた」というテキストとともに投稿した。
「確かにこの事案は他の(ロシア)軍艦艇にちょうど24時間前に起きた事案によって影が薄くなっているが、双方の事案の影響は大きい。ロシア艦艇が沈められるのはこれが最後だと信じる理由はどこにもない」
24時間前の事案というのは、ロシア海軍の大型揚陸艦「オレネゴルスキー・ゴルニャク」が、ロシア南部ノボロシスク付近で攻撃されたことを指している。ノボロシスクには大きなロシア軍の海軍基地があるほか、石油積み出し港としても知られる。
オレネゴルスキー・ゴルニャクは全長約110メートル、3600トンで、水陸両用部隊を運んでいる。ロシアの北方艦隊で運用されることが多いが、ウクライナ侵攻が始まってからは黒海艦隊で使われていた。