最新記事
アメリカ経済

フィッチによる史上2番目の米国債格下げの根拠ってこんなに些細なことだったのか

Why Fitch's Credit Downgrade Is A Serious Debt Warning

2023年8月3日(木)20時07分
オースティン・アロンツォ

米国債の格付けを最上級から格下げした2番目の会社、フィッチのロンドンオフィス  Reinhard Krause-REUTERS

格付け会社フィッチ・レーティングスは8月1日、長期外貨建ての米国債の格付けを最上級の「AAA」から「AA+」に引き下げた。米連邦政府に対して、過大な財政支出と借り入れの習慣を変えなければ、米経済や世界経済にとって深刻な結果を招くことになりという警告を突きつけた。ジャネット・イエレン米財務長官は、この格付けの引き下げについて「正当な根拠がまったくない」と異論を唱えた。

フィッチの広報担当を務めるエリザベス・フォガティは、米オンライン紙「アイビータイムズ」に宛てた声明の中で、今回の判断について「政治的な二極化や財政赤字の悪化、債務負担の高まり」など複数の要因を考慮した結果だと述べた。

声明は「過去20年間、財政のガバナンスが悪化しており、また政治的な二極化が進んでいることが、債務上限をめぐる度重なるこう着状態につながっている」と述べた。「社会保障制度やメディケア(高齢者医療保険制度)などの中期的な問題について、財政面や債務面で適切な対処が行われるという信頼感もそのせいで低下した」

米国債の格下げはウォール街に衝撃をもたらし、8月2日の取引ではS&P500とダウ平均、ナスダック(米店頭市場)総合指数の主要3指数すべてが約1~2%下落した。

2011年のS&Pの判断は正しかった?

今回のフィッチによる格下げは、S&Pグローバルが2011年に長期格付けを最上級の「AAA」から「AAプラス」に1段階引き下げた史上初の判断に次ぐものだ。
S&Pはその後格付けを据え置いているが、「もしも政治に悪影響を及ぼす予想外の出来事が、アメリカを支える制度の強さや長期的な政策決定の妨げになったり、世界の主要な準備通貨としてのドルの地位を危うくしたりした場合」には、今後2~3年で再び米国の格付けを引き下げる可能性があると警告した。逆に再び格付けを最上級に引き上げることがあるとすればそれは、「効果的かつ積極的な公共政策が実施され、公的債務の増大が止まって財政の健全性が回復」したときだと述べた。

格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは、7月13日に公表したメモの中で、米国債の「AAA」の格付けを維持すると確認した。だが、財政面の課題解決の見通しが薄いままなら、やはり格付けを引き下げる可能性はあると述べた。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

北朝鮮の金総書記、核戦争を警告 米が緊張激化と非難

ビジネス

NY外為市場=ドル1年超ぶり高値、ビットコイン10

ビジネス

米、ロシアのガスプロムバンクに新たな制裁 取引禁止

ビジネス

米国株式市場=上昇、ダウ・S&P1週間ぶり高値 エ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中