最新記事
アフリカ

ニジェールの政変につけこむワグネルとアメリカの悪夢

U.S. in 'Nightmare Scenario' as Niger Coup Gives Wagner Group Opportunity

2023年8月3日(木)18時00分
ジョン・ジャクソン

中央アフリカのトゥアデラ大統領を乗せた車を警護するワグネル戦闘員(7月27日、首都バンギ)

<西側寄りの政権を失脚させた軍事クーデターは、アメリカにとって「悪夢のシナリオ」だと、テロ専門家が警告>

西アフリカの内陸国でウランの主要な産出国であるニジェールで最近起きたクーデターは、アメリカにとっては「悪夢のシナリオ」であり、ロシアの民間軍事会社ワグネル・グループがこの地域でさらに幅を利かせる危険性があると、著名なテロ専門家が8月2日に警告を発した。

<マップ>西アフリカの親露3軍事政権

ニジェールでは7月26日、西側寄りのモハメド・バズム大統領率いる政権が倒され、バズムは自身の警護に当たる兵士たちに拘束された。2日後、バズムの警護隊の元司令官であるアブドゥラハマネ・チアニ将軍が国営テレビで全権掌握を宣言した。

ニューヨークに拠点を置くシンクタンク「スーファン・グループ」の政策・調査ディレクターのコリン・クラークは、ニジェールをはじめサハラ砂漠南縁部に広がるサヘル地域の国々で起きたクーデターや混乱は、ジハーディスト(イスラム過激派の武装組織)とワグネルにとっては、勢力拡大の絶好のチャンスになると、ソーシャルメディア・プラットフォームのX(旧ツイッター)で述べた。

ロシアは距離を置くポーズ

「#シエラレオネでもクーデターの企てが噂され、『クーデターの連鎖』への懸念は高まる一方だ。#ニジェールと#サヘル地域で今起きている事態は、アメリカにとって悪夢のシナリオにほかならない。警戒すべきは、西アフリカの沿岸部の国々に混乱が広がること。ジハーディストが勢いづき、ロシアの傭兵部隊が権力の空白を埋める危険性がある」

先週末には、ニジェールの首都ニアメーでクーデターを支持する多数の市民が、旧宗主国フランスの大使館前などでデモを繰り広げ、一部が暴徒化するなどの騒ぎが起きた。多くのデモ参加者が「フランス出て行け」と叫ぶ一方で、ロシア国旗を振り、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領を救世主扱いして「プーチン万歳」の声を上げていた。

こうした中、ロシア政府はニジェールの政変とは距離を置く姿勢を見せている。ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は先週、ロシアはバズムの「速やかな釈放」を望むと語り、ドミトリー・ペスコフ大統領府報道官も7月31日、「あらゆる側に自制」を求めると述べた。

社会的価値創造
「子どもの体験格差」解消を目指して──SMBCグループが推進する、従来の金融ビジネスに留まらない取り組み「シャカカチ」とは?
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

英消費者信頼感、11月は3カ月ぶり高水準 消費意欲

ワールド

トランプ氏、米学校選択制を拡大へ 私学奨学金への税

ワールド

ブラジル前大統領らにクーデター計画容疑、連邦警察が

ビジネス

カナダ、63億加ドルの物価高対策発表 25年総選挙
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 8
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中