最新記事
F-16戦闘機

改めて問う、F-16はウクライナ反攻にどう役立つのか

How F-16 Deliveries Can Boost Ukraine's Counteroffensive

2023年8月21日(月)18時20分
ブレンダン・コール

遂にやってくる!デンマークの空軍基地でF-16に載ったウクライナのゼレンスキー大統領(8月30日) Ukrainian Armed Forces/REUTERS

<デンマークとオランダからウクライナに対するF-16戦闘機の供与が決定。戦場に投入されれば、ウクライナ軍の反攻を成功に導く可能性がある>

【動画】F-16の超低空飛行

デンマークとオランダが、ウクライナに米製戦闘機F-16を供与する意向を明らかにした。元米軍幹部によれば、F-16はロシアに占領された国土の奪還をめざすウクライナの反転攻勢を後押しすることになるだろう。

米国務省は8月18日、ウクライナ人パイロットに対する操縦訓練が完了した時点で、F-16はウクライナに提供されると発表。それによってウクライナ軍は「その新しい能力を最大限に活用する」ことが可能になると述べた。

供与されるのはデンマークとオランダが保有している機体だが、F-16戦闘機はアメリカ製なので、供与にはアメリカ政府の承認が必要となる。

オランダはF-16を24機保有していると見られているが、より先進的な戦闘機への置き換えが決まっているので、今後、使用の予定はない。デンマークもまた、保有するF-16約30機のアップグレードを計画している。

アメリカは、ウラジーミル・プーチン大統領が戦争を拡大させかねない動きを避けようとしており、これまでウクライナ軍が使用してきた主に旧ソ連時代の航空機よりも先進的な航空機をウクライナに提供することに消極的だった。

だがジョー・バイデン大統領は今年5月、広島で行われたG7サミットでこれまでの姿勢を覆し、欧州の同盟国によるF-16の供与を容認し、訓練を促進することを明らかにした。
黄色は付け足し部分

反攻の成否を左右

18日の発表はウクライナから大歓迎されたが、ロシアの航空優勢に対抗するためにF-16を使用できるようになるまでには数カ月かかると予想されている。

「F-16戦闘機が十分な数、十分なスピードで提供されれば、ウクライナは占領された土地を取り戻し、守ることができるようになるだろう」と、米軍のゴードン・B・"スキップ"・デービス・ジュニア少将は本誌に電子メールでコメントを寄せた。

F-16のような西側の戦闘機は、ロシア製戦闘機よりも優れたレーダーや航空電子機器、誘導システムを備えている。精密誘導ミサイルや爆弾といった兵器の搭載が可能で、飛行速度は時速約2400キロに対する。F-16のターゲット能力のおかげで、ウクライナ軍はあらゆる状況下でロシア軍をより正確に攻撃することができるようになる。

欧州政策分析センター(CEPA)の上級研究員であるデービスは、F-16戦闘機が航空機による攻撃阻止や地上支援の役割を果たし、「防衛・反攻作戦を支援するために大いに必要とされるスタンドオフ攻撃(敵の対空ミサイルの射程外から攻撃する)能力を提供するだろう」と述べた。

F-16はロシアの指揮通信や後方支援、防空、電子戦能力を狙うこともできる。「防空や空対空の役割を果たす戦闘機は、ロシアのミグ戦闘機を打ち負かすことができるし、適切なレーダーと弾薬があれば、ドローンや巡航ミサイルをやっつけることもできる」と、デービスは言う。

戦闘機とともに西側の戦闘車両、長距離射撃、防空システムを導入すれば、ウクライナ軍は反攻を成功させることができる。

社会的価値創造
「子どもの体験格差」解消を目指して──SMBCグループが推進する、従来の金融ビジネスに留まらない取り組み「シャカカチ」とは?
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

新型ミサイルのウクライナ攻撃、西側への警告とロシア

ワールド

独新財務相、財政規律改革は「緩やかで的絞ったものに

ワールド

米共和党の州知事、州投資機関に中国資産の早期売却命

ビジネス

米、ロシアのガスプロムバンクに新たな制裁 サハリン
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでいない」の証言...「不都合な真実」見てしまった軍人の運命
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 6
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 7
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 8
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 9
    巨大隕石の衝突が「生命を進化」させた? 地球史初期…
  • 10
    バカげた閣僚人事にも「トランプの賢さ」が見える...…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 5
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 8
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 9
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 10
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中