最新記事
月面着陸

ロシアの月着陸失敗後、プロジェクトを率いた大物科学者も入院 次はインドの月着陸が目前だ

Top Russian rocket scientist hospitalized after Luna-25 moon mission crash

2023年8月22日(火)17時20分
イザベル・ファン・ブリューゲン

月を目指したロシアのルナ25号(8月16日) Roscosmos/ REUTERS

<半世紀越しの月探査プロジェクトの失敗で、宇宙大国ロシアの時代は終わった>

ロシアが打ち上げた無人月探査機「ルナ25号」が8月20日、月面に衝突した。旧ソ連時代以来およそ半世紀ぶりの月面探査は失敗。月の南極付近に着陸させることができれば世界初の快挙となるはずだったが、その栄冠は数日でインドのものになるかもしれない。

<動画>配信開始まであと29時間! インドが月着陸をライブ配信

ルナ25号が月面に衝突した後、ロシアトップの科学者・天文学者のミハイル・マロフ(90)が病院に搬送されていた。

ソ連の宇宙開発プログラムを率いた一人であるマロフは20日、ロシアの経済紙RBCに対して、月探査は自分の生涯をかけた仕事であり、ミッションの失敗を聞いた後に病院に搬送されたと語った。

無人月探査機「ルナ25号」は21日に月の南極付近に着陸する見通しだったが、軌道を外れて制御不能となり、月面に衝突した。ロシア国営宇宙企業ロスコスモスは19日、「ルナ25号」との通信が途絶えたと発表した。ロシアの月探査機打ち上げは、ソ連時代の1976年以来およそ半世紀ぶりだった。

「ルナ25号を(月面に)着陸させられなかったことは残念だ」とマロフは述べた。「今回のミッションは私にとって、ロシアの月面探査計画の復活を目にすることができる、おそらく最後のチャンスだった」

マロフはRBCに対して、現在はモスクワの大統領府近くにある大統領府中央病院の医師団の管理下にあると語った。彼はまたロシア当局に対して、ルナ25号が月面に衝突した理由について沈黙せずに公表し議論すべきだと呼びかけた。

弾圧の果てに

マロフはソビエト連邦時代の宇宙探査計画の策定および実行において重要な役割を果たし、初の火星および金星探査計画にも携わっていた。

今回の無人月探査機「ルナ25号」は8月11日の午前2時(現地時間)、モスクワから約5550キロメートル東に位置するロシア極東アムール州のボストチヌイ宇宙基地から打ち上げられた。

米NASAによれば、今回のミッションの目標は主に2つ。月の極地の表土の組成を調べることと、月の極圏上空にあるプラズマや塵を調べることだ。ルナ25号は月面に着陸後、1年をかけて月面の探査を行う予定だった。

ロシア出身で現在は米シカゴ大学の政治経済学者であるコンスタンチン・ソニンはX(旧ツイッター)への投稿の中で、今回のミッションはロシアのウラジーミル・プーチン大統領が「知識人を弾圧し、科学と教育を攻撃し、戦争を仕掛けておきながら、虚栄心も満たそうとしたプロジェクト」だと述べた。

ビジネス
栄養価の高い「どじょう」を休耕田で養殖し、来たるべき日本の食糧危機に立ち向かう
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 7
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 8
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 9
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中