最新記事
映画

大胆な「ヌードシーン」を処理した斬新な手法...話題作『オッペンハイマー』、インドなどで思わぬ変更

Florence Pugh 'Oppenheimer' Nude Scenes Censored in Absolutely Bizarre Way

2023年7月28日(金)21時07分
ライアン・スミス

一方、インド市場では、別の件で怒りの声が上がっている。マーフィ演じるオッペンハイマーと、ピュー演じるタットロックのとりわけ長いベッドシーンで、ヒンドゥー教の聖典が使われているというのがその理由だ。

 
 
 
 
 

問題のベッドシーンでは、オッペンハイマーがタットロックから、「バガヴァッド・ギーター」を音読してほしいと頼まれる。オッペンハイマーは恋人の求めに応じて、「われは死なり、世界の破壊者なり」という一節を音読する。これは、世界初の核爆発を目撃したときに、オッペンハイマーが思い出したと伝えられる一節だ。

セーブ・カルチャー・セーブ・インディア財団の創設者ウダイ・マフルカルは、オッペンハイマー公開直後の週末に、ノーラン監督宛ての書簡をツイッターで公開。この映画は「反ヒンドゥー教の陰謀」だと非難した。

「ヒンドゥー教徒の信仰に対する直接的な攻撃」

マフルカルは、「科学者の人生を描くためには不必要なこのシーンの背後にある動機や論理はわからないが」と前置きしたうえで、「これは、10億人にのぼる寛容なヒンドゥー教徒たちの信仰に対する直接的な攻撃であり、ヒンドゥー教のコミュニティーに戦争を仕掛けているに等しい。反ヒンドゥー勢力による、より大きな陰謀の一部にも見える」と主張した。

マフルカルは続ける。「私たちはとても偏った世界に生きている。政府機関、メディア、政治、さらに、ハリウッドの映画業界は、イスラム教徒やコーランについてはとても敏感になっている。たとえイスラム教徒のテロがテーマであったとしても、一般的なイスラム教徒の価値観を損なうような形でコーランやイスラム教を取り上げないよう用心している。そして、この一線を越えようとする人々を批判する意味で使われるようになった言葉がある。イスラム恐怖症(イスラム教徒に対する理不尽な恐怖や嫌悪、偏見)だ」

「なぜ同じ礼儀がヒンドゥー教徒に適用されないのだろう?」

マフルカルはノーランに対し、こう呼び掛けた。「インドでは、あなたの映画制作は高く称賛されている。もしあなたがこのシーンを削除し、ヒンドゥー教徒の心をつかむために必要なことをすれば、あなたは、人の心に敏感な人物として認められ、たくさんの素晴らしい人々と友情を育むことができる」

「私たちは、10億人のヒンドゥー教徒と、聖なるギーターによって変容した人たちの時を超えた伝統のために、聖典の尊厳を守るために必要なことをすべて行い、全世界であなたの映画からこのシーンを削除することを強く求める」

「もしあなたがこの訴えを無視することを選べば、インド文明に対する意図的な攻撃と見なされるだろう」

この映画はまた、イギリスで制作されたドラマ「ピーキー・ブラインダーズ」で主演したマーフィが、ユダヤ人でないにもかかわらず、ユダヤ人の主人公(オッペンハイマー)を演じたことでも批判を受けている。
(翻訳:ガリレオ)

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

韓国尹大統領に逮捕状発付、現職初 支持者らが裁判所

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 8
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 9
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 10
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中