最新記事
アフリカ

「ワグネル」もう1つの戦場...中東の「覇権争い」に、ロシアとエジプトまで絡んだスーダン紛争の奇々怪々

Really a Proxy War

2023年7月27日(木)19時01分
タラル・ムハマド

230801p32_SDN_03v2.jpg

サウジアラビアのムハンマド皇太子とブルハン BANDAR ALGALOUDーCOURTESY OF SAUDI ROYAL COURTーREUTERS

エジプトとロシアも関与

イエメン内戦をめぐりアメリカはサウジアラビアへの攻撃用兵器の売却を凍結しているが、一方で20年11月にトランプ前米政権は、UAEに最新鋭ステルス戦闘機F35を売却することを承認した。取引はバイデン現米政権下で見直しの対象となっているが、実現すればUAEはアラブ諸国で初めてF35を受け取ることになる。

近年、サウジアラビアとUAEの競争の舞台はアフリカへと広がっている。資源が豊富で戦略的立地にあるスーダンは、その最前線だ。

バシルの退陣後、湾岸諸国はスーダンで重要な役割を果たしてきた。スーダンにおけるサウジアラビアとUAEの利害は、当初はおおむね一致しており、両国は短命の民主化移行にも一役買った。スーダンはイエメンでサウジアラビアを軍事支援し、UAEはスーダンのアブラハム合意への参加を仲介した。

さらに、両国は長年にわたりスーダンの経済に投資し続けてきた。UAEの対スーダン投資は18年に累計76億ドルに達した。バシル政権崩壊後は、農業プロジェクトや紅海の港湾整備などへ60億ドル相当の投資も追加している。サウジアラビアは22年10月に、スーダンのインフラ、鉱業、農業などさまざまな経済部門に最大240億ドルを投資すると発表した。

しかし現在は、中東の新しい覇者として主導権争いが激化。サウジアラビアはブルハンと、UAEはダガロとそれぞれ手を組み、スーダンの資源、エネルギー、物流の出入りを掌握しようとしている。

サウジアラビアがエジプトと共にブルハンを支援しているのに対し、UAEはロシアと協力して、民間軍事会社ワグネルを通じてRSFを支援している。ワグネルは17年からスーダンで活動している。

19年からはリビアでも活動を拡大し、同国東部を支配するハリファ・ハフタル将軍の「代理」として戦った(6月にワグネルがロシアで反乱に失敗した今、先行きは不透明だが、報道によれば多くの国で「通常どおり」活動しているようだ)。

UAEはRSFとの提携について沈黙を守っている。しかし、ダガロはスーダンでワグネルが支配する金鉱を警備するなど、UAEの権益の管理人として動いているとみられる。これらの鉱山の金はUAEを経由してロシアに運ばれている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

仏当局、ディープシークに質問へ プライバシー保護巡

ビジネス

ECB総裁、チェコ中銀の「外貨準備にビットコイン」

ビジネス

米マスターカード、第4四半期利益が予想上回る 年末

ワールド

米首都近郊の旅客機と軍ヘリの空中衝突、空域運用の課
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 4
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 5
    東京23区内でも所得格差と学力格差の相関関係は明らか
  • 6
    ピークアウトする中国経済...「借金取り」に転じた「…
  • 7
    空港で「もう一人の自分」が目の前を歩いている? …
  • 8
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 9
    トランプのウクライナ戦争終結案、リーク情報が本当…
  • 10
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 3
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 4
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 5
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 6
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 7
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 8
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 9
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 10
    日鉄「逆転勝利」のチャンスはここにあり――アメリカ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 6
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 7
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 8
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 9
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 10
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中