「ワグネル」もう1つの戦場...中東の「覇権争い」に、ロシアとエジプトまで絡んだスーダン紛争の奇々怪々
Really a Proxy War
エジプトとロシアも関与
イエメン内戦をめぐりアメリカはサウジアラビアへの攻撃用兵器の売却を凍結しているが、一方で20年11月にトランプ前米政権は、UAEに最新鋭ステルス戦闘機F35を売却することを承認した。取引はバイデン現米政権下で見直しの対象となっているが、実現すればUAEはアラブ諸国で初めてF35を受け取ることになる。
近年、サウジアラビアとUAEの競争の舞台はアフリカへと広がっている。資源が豊富で戦略的立地にあるスーダンは、その最前線だ。
バシルの退陣後、湾岸諸国はスーダンで重要な役割を果たしてきた。スーダンにおけるサウジアラビアとUAEの利害は、当初はおおむね一致しており、両国は短命の民主化移行にも一役買った。スーダンはイエメンでサウジアラビアを軍事支援し、UAEはスーダンのアブラハム合意への参加を仲介した。
さらに、両国は長年にわたりスーダンの経済に投資し続けてきた。UAEの対スーダン投資は18年に累計76億ドルに達した。バシル政権崩壊後は、農業プロジェクトや紅海の港湾整備などへ60億ドル相当の投資も追加している。サウジアラビアは22年10月に、スーダンのインフラ、鉱業、農業などさまざまな経済部門に最大240億ドルを投資すると発表した。
しかし現在は、中東の新しい覇者として主導権争いが激化。サウジアラビアはブルハンと、UAEはダガロとそれぞれ手を組み、スーダンの資源、エネルギー、物流の出入りを掌握しようとしている。
サウジアラビアがエジプトと共にブルハンを支援しているのに対し、UAEはロシアと協力して、民間軍事会社ワグネルを通じてRSFを支援している。ワグネルは17年からスーダンで活動している。
19年からはリビアでも活動を拡大し、同国東部を支配するハリファ・ハフタル将軍の「代理」として戦った(6月にワグネルがロシアで反乱に失敗した今、先行きは不透明だが、報道によれば多くの国で「通常どおり」活動しているようだ)。
UAEはRSFとの提携について沈黙を守っている。しかし、ダガロはスーダンでワグネルが支配する金鉱を警備するなど、UAEの権益の管理人として動いているとみられる。これらの鉱山の金はUAEを経由してロシアに運ばれている。