最新記事
アフリカ

「ワグネル」もう1つの戦場...中東の「覇権争い」に、ロシアとエジプトまで絡んだスーダン紛争の奇々怪々

Really a Proxy War

2023年7月27日(木)19時01分
タラル・ムハマド

230801p32_SDN_04v2.jpg

ロシアのラブロフ外相とダガロ RUSSIAN FOREIGN MINISTRY PRESS SERVICEーAP/AFLO

エジプトの微妙な立場

ワグネルを介したUAE、RSF、ロシアの3国関係は、22年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻で強固なものになった。ロシアは欧米からの制裁の影響を和らげるために、金などによる資金調達への依存度を高めている。米財務省は今年6月、ダガロに関連のある企業でそれぞれスーダンとUAEを拠点とする金産業2社と、ブルハンにつながる防衛関連企業2社に制裁を科した。

一方でサウジアラビアは、スーダンの平和を構築する人道主義者としてのブランドを確立しようと精力的に動いている。サウジアラビアのジッダでアメリカを交えた停戦協議を主催し、スーダンの内外の人々を支援して、多くの市民をスーダンの首都ハルツームから避難させる手助けをしている。

サウジアラビアの盟友であるエジプトのアブデル・ファタハ・アル・シシ大統領も、スーダン国軍が完全な支配権を取り戻すために上空支援を中心に援助している。

アナリストたちは、RSFと戦うブルハンを助けるために、エジプトがスーダンへの本格的な侵攻を検討しているのではないかと示唆してきた。実行されれば、サウジアラビアの対スーダン投資は確実に守られ、アフリカへの影響力も拡大するだろう。

もっとも、ジャーナリストのモハメド・サレムが指摘するように、エジプトはジレンマに陥っている。彼らには「資源も、戦争をしたいという欲望もないが、この状況を無視できなくなっている」。

スーダンをブルハンもしくはダガロが支配して、それによりサウジアラビアもしくはUAEの影響下に入れば、湾岸諸国のパワーバランスは変化し、2国間の緊張はエスカレートするだろう。

ただし、現在の紛争がスーダンにもたらす結果は、そこまで明快ではなさそうだ。リビアと同じようにスーダンはさらに分裂して、民族や部族の境界線に沿って細分化されるかもしれない。

スーダンの紛争は、サウジアラビアとUAEの双方にとって、地域でのプレゼンスと支配を拡大する好機である。

サウジアラビアとしては、国軍の完全勝利が、アラブ・イスラム世界のリーダーとしての自分たちの地位を強化する。UAEとしてはRSFが優位に立てば、中東におけるサウジアラビアの支配力を弱めることができ、自分たちの勝利につなげることができるだろう。

From Foreign Policy Magazine

20250204issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年2月4日号(1月28日発売)は「トランプ革命」特集。大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で、世界はこう変わる


※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

都区部コアCPI、1月は+2.5%に伸び拡大 生鮮

ビジネス

失業率12月は2.4%に改善、就業者増加 求人倍率

ビジネス

日経平均は小幅続伸で寄り付く、米株高を好感 ハイテ

ビジネス

米ビザ10─12月期、利益が予想上回る 年末消費が
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 4
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 5
    東京23区内でも所得格差と学力格差の相関関係は明らか
  • 6
    ピークアウトする中国経済...「借金取り」に転じた「…
  • 7
    空港で「もう一人の自分」が目の前を歩いている? …
  • 8
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 9
    トランプのウクライナ戦争終結案、リーク情報が本当…
  • 10
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 4
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 5
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 6
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 7
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 8
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 9
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 10
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 5
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 10
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中