最新記事
北朝鮮

進む北朝鮮の核開発、高まる核戦争のリスク...日米韓に戦略転換の刻が迫る

MOVING TO DETERRENCE

2023年7月19日(水)12時30分
アンキット・パンダ(カーネギー国際平和財団シニアフェロー)
首都・平壌で今年2月に行われた軍事パレード

首都・平壌で今年2月に行われた軍事パレード KCNAーREUTERS

<進む開発と核戦争のリスク、日米韓は抜本的な戦略転換を迫られている。本誌「『次のウクライナ』を読む 世界の火薬庫」特集より>

北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記は、核戦力開発とその現代化をさらに推し進める決意を明らかにしている。昨年9月には、「制裁措置が1000年間続いても」決意を貫くと表明した。

2021年以降、北朝鮮のミサイル技術者や核物理学者は勤勉にタスクを遂行してきた。同年1月に策定された国防発展5カ年計画は、より高性能な新型ミサイルや戦略核兵器、偵察衛星の開発を掲げている。

 
 
 
 

これまでのところ、北朝鮮は創意工夫のおかげで、多くの目標の達成におおむね成功している。新型コロナ対策として国境を封鎖したものの、核・ミサイル開発を含めた国防計画に支障は出ていない。外部調達している部品や材料が何であれ、十分な量を確保し続け、ウラン濃縮やプルトニウム再処理も継続している。

こうした進展の結果、北東アジアと世界の安全保障の課題が大きく変質しているにもかかわらず、アメリカや韓国、日本は全般的な対北朝鮮政策の転換に消極的だ。今や北朝鮮は装備十分の核兵器保有国で、軍事力の残存可能性や多様性は増す一方。それでも、アメリカと同盟国は不拡散政策を追求し続け、北朝鮮の核非武装を目標に掲げている。

不拡散政策は、1991年末に韓国と北朝鮮が合意した「南北非核化共同宣言」の枠組みを維持している。だが北朝鮮の核開発成功に伴う核エスカレーションや核戦争懸念という現実のリスクに対処する上では、ほとんど効果がない。つまり、問題はもはや「不拡散」ではなく「抑止」。アメリカと同盟国は各種のリスク削減手法の評価に取りかかり、軍縮路線を探らなければならない。

こうしたアプローチには、北朝鮮の核兵器保有を承認することになるとの反発がある。だが、より重視すべきなのは核戦争のリスクだ。北朝鮮軍の現代化は、朝鮮半島とその周辺の現実をさらに危険なものにしている。より小型で低出力の核兵器の開発は、限定核戦争を遂行して生き残ることが可能だという北朝鮮の自信を深めることになりかねない。

北朝鮮のICBM(大陸間弾道ミサイル)の精度や能力が高まるなか、アメリカによる同盟国防衛を阻止できるという自信も増すかもしれない。北朝鮮はICBM戦力を拡大しており、いずれ必要な弾数が配備されれば、アメリカによる長距離ミサイルの先制破壊をほぼ不可能にするのに十分な規模と残存可能性を獲得すると考えられる。

キャリア
企業も働き手も幸せに...「期待以上のマッチング」を実現し続ける転職エージェントがしていること
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中