進む北朝鮮の核開発、高まる核戦争のリスク...日米韓に戦略転換の刻が迫る
MOVING TO DETERRENCE
首都・平壌で今年2月に行われた軍事パレード KCNAーREUTERS
<進む開発と核戦争のリスク、日米韓は抜本的な戦略転換を迫られている。本誌「『次のウクライナ』を読む 世界の火薬庫」特集より>
北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記は、核戦力開発とその現代化をさらに推し進める決意を明らかにしている。昨年9月には、「制裁措置が1000年間続いても」決意を貫くと表明した。
2021年以降、北朝鮮のミサイル技術者や核物理学者は勤勉にタスクを遂行してきた。同年1月に策定された国防発展5カ年計画は、より高性能な新型ミサイルや戦略核兵器、偵察衛星の開発を掲げている。
これまでのところ、北朝鮮は創意工夫のおかげで、多くの目標の達成におおむね成功している。新型コロナ対策として国境を封鎖したものの、核・ミサイル開発を含めた国防計画に支障は出ていない。外部調達している部品や材料が何であれ、十分な量を確保し続け、ウラン濃縮やプルトニウム再処理も継続している。
こうした進展の結果、北東アジアと世界の安全保障の課題が大きく変質しているにもかかわらず、アメリカや韓国、日本は全般的な対北朝鮮政策の転換に消極的だ。今や北朝鮮は装備十分の核兵器保有国で、軍事力の残存可能性や多様性は増す一方。それでも、アメリカと同盟国は不拡散政策を追求し続け、北朝鮮の核非武装を目標に掲げている。
不拡散政策は、1991年末に韓国と北朝鮮が合意した「南北非核化共同宣言」の枠組みを維持している。だが北朝鮮の核開発成功に伴う核エスカレーションや核戦争懸念という現実のリスクに対処する上では、ほとんど効果がない。つまり、問題はもはや「不拡散」ではなく「抑止」。アメリカと同盟国は各種のリスク削減手法の評価に取りかかり、軍縮路線を探らなければならない。
こうしたアプローチには、北朝鮮の核兵器保有を承認することになるとの反発がある。だが、より重視すべきなのは核戦争のリスクだ。北朝鮮軍の現代化は、朝鮮半島とその周辺の現実をさらに危険なものにしている。より小型で低出力の核兵器の開発は、限定核戦争を遂行して生き残ることが可能だという北朝鮮の自信を深めることになりかねない。
北朝鮮のICBM(大陸間弾道ミサイル)の精度や能力が高まるなか、アメリカによる同盟国防衛を阻止できるという自信も増すかもしれない。北朝鮮はICBM戦力を拡大しており、いずれ必要な弾数が配備されれば、アメリカによる長距離ミサイルの先制破壊をほぼ不可能にするのに十分な規模と残存可能性を獲得すると考えられる。