「脳は200ドル、頭部は1000ドル」...「墓泥棒」と医学部の切っても切れない「歴史的関係」
Bodies Up for Grabs
墓荒らしによって解剖学の材料にされた遺体は、生きているときから疎外された集団に属している人々であることが多かった。すなわち、黒人や先住民、セックスワーカー、有罪判決を受けた人、移民などだ。
死後に墓を荒らされた人の多くは地元に家族がいなかったり、遺体を守ってくれるような「霊廟や豪華な墓」を建てるカネがなかった人だと、歴史家たちは指摘する。
もっとも、こうした歴史と今回のハーバード大学の件には重要な違いがある。悪意に満ちた大学職員たちに盗まれた遺体は、遺族から大学に寄贈された後に盗まれたのだ。
この盗難は現代の小さな闇市場の一部分であって、医学教育システムの基盤を成すものではない。
現在、アメリカでは推定で毎年2万体が医学のために献体されており、これが大学医学部の遺体安置所を支えている。
ただしリースによれば、人々が研究や教育のために献体をするようになったのは19世紀末~20世紀初頭以降のことだ。
今回のような現代の墓泥棒は、陰惨なものに対する人間の強い興味を満たすためでもあるだろう。
それでも遺体盗掘の長い歴史と根底のところでよく似ていると、ジェンダー、セクシュアリティー、人種を研究する歴史学者のキャスリーン・ブラウンは言う。
「誰にも愛されていない遺体の部位は商品になり得る、好きなようにして構わないと、都合よく考える人もいる」