プリゴジンが暴いたプーチンの虚像...怒りに震え動揺──ロシア国民が初めて目にした大統領の顔
No Longer Top Dog?
揺らぐ親プーチン勢力
極右民族主義集団の「怒れる愛国者クラブ」は、ウクライナ戦争でロシアが苦戦しているのはプーチンとショイグの指導力不足と政府の腐敗のせいだと主張し、プリゴジンを擁護してみせた。
この団体は26日にギルキンらを招いて会合を開き、ロシア政府がウクライナ戦争で敵に譲歩することは絶対に許さないと宣言した。しかも彼らは、自分たちの背後には1000万~1500万の有権者がいるとし、来年に迫るロシア大統領選挙で影響力を行使できると豪語している。
多くのロシア人、とりわけ権力の中枢にいる人たちが反乱の行方を傍観したという前代未聞の事態も注目に値する。以前なら、彼らは必ずプーチンへの忠誠を表明し、口をそろえて敵を糾弾したものだ。
いい例がロシア政府の御用テレビ局RTの編集長マルガリータ・シモニャンだ。従来はプーチンを声高に支援し、プリゴジンとワグネルにも惜しみない称賛を送っていたのに、25日の晩まではひたすら沈黙していた。そして決着がついた後に、ようやくプーチン支持の発言をした。
親プーチンの中道左派政党「公正ロシア」を率いるセルゲイ・ミロノフも、以前は積極的にワグネルをたたえていたが、今回は沈黙していた。プーチンのおかげで潤ってきた政商たちも声を上げなかった。そして一般国民は、ほぼ無関心を装っていた。
危機に際して自ら動かず、決断を先送りするのはプーチンの常套手段。今まではそれで、不都合が起きても誰かに責任をなすり付けることができた。だが今回は違った。彼自身の無残な欠点が暴かれた。反乱の芽を摘むことができず、粉砕し鎮圧するという約束も守れなかった。決断力のなさと弱さは明らかだ。裸の王様であることが、ばれた。独裁者には最悪の事態だ。
プーチン体制を支えるはずの治安部隊と情報機関でさえ、今のところ動きが鈍い。ロシアは事実上の独裁国で警察国家だが、まだ反乱参加者やその支持者の一斉検挙に踏み切っていない。もはや治安部隊でさえ気付いたのだろう。無慈悲な支配者というプーチンの自画像は虚像だったと。
同じ思いは国民の間にも急速に広がっている。さて、この先に待つのは自滅の道か。