最新記事
NATO

スウェーデンのNATO加盟はバルチック艦隊にとっての悪夢

Sweden joining NATO is a nightmare for Russia's Baltic Sea fleet

2023年7月13日(木)16時12分
エリー・クック

「海軍の日」のために整列したロシア海軍艦船(2022年7月、カリニングラード) Vitaly Nevar-REUTERS

<バルト海は実質的に「NATOの海」となり、ロシアは締め出される>

<動画>ロシア巡洋艦「モスクワ」の「最期」

スウェーデンがNATOに加盟すれば、ロシア海軍のバルチック艦隊は「深刻な問題」に直面することになる――複数の専門家が本誌にこう指摘した。

ロシアはバルト海沿岸の飛び地であるカリーニングラードとロシア第2の都市サンクトペテルブルクに海軍基地を置いている。しかしスウェーデンがNATOに正式加盟すれば、バルト海沿岸国はロシアを除いて全てNATO加盟国となる。バルト海は実質的に「NATOの海」となり、ロシアのバルト艦隊は難題に直面することになると専門家は指摘する。

balticsea.jpg
バルト海と沿岸諸国。ロシア以外はNATO加盟国に Peter Hermes Furian-Shutterstock.

2022年2月にロシアがウクライナに侵攻したことを受けて、2023年4月にはフィンランドがNATOに加盟。スウェーデンも近く加盟を承認される見通しだ。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は過去に、フィンランドとスウェーデンのNATO加盟に反対を表明し、「軍事的、政治的に重大な結果を招くことになる」と警告していた。

ロシアの懸念は外国部隊の駐留か

オランダのシンクタンク「ハーグ戦略研究所」の戦略アナリスト、フレデリック・マーテンズは本誌に対し、この拡大でNATOはバルト海とその沿岸だけでなく、上空でも防衛力を強化できると指摘。「NATOはこの分野で既に、圧倒的に優位な立場にある」と述べ、「ロシアのバルチック艦隊は深刻な問題に直面している」と分析した。彼はまた、スウェーデンの加盟によりNATOの空軍力が強化される一方、ロシアの艦船は地上配備型の防空システムに頼らざるを得なくなるだろうと主張した。

それだけではない。NATOがバルト海沿岸の支配を強化できるということは、「バルト海でロシアの艦船が、15メートル程度の低高度で飛行する(シースキミング)ミサイルが間近に迫って意表を突かれない場所はほとんどなくなる」ことを意味しているとマーテンズは指摘した。

米海軍分析センターの上級研究員であるドミトリー・ゴレンブルグは、スウェーデンはNATOに加盟することで、情報や諜報の共有などでこれまで以上にNATOと連携を強化することになると指摘。ロシアとしては今後、外国の部隊――とりわけ米軍の兵士たち――がNATO軍としてスウェーデン国内に駐留する可能性を懸念する可能性が高いと述べた。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=小反落、ダウ155ドル安 関税巡る不

ビジネス

ユナイテッド航空、第2四半期見通し予想下回る 景気

ワールド

米、メキシコ麻薬カルテルのリーダーに制裁 情報提供

ビジネス

NY外為市場=ドルが対ユーロ・円で上昇、関税巡り慎
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気ではない」
  • 2
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ印がある」説が話題...「インディゴチルドレン?」
  • 3
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 4
    NASAが監視する直径150メートル超えの「潜在的に危険…
  • 5
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 6
    【クイズ】世界で2番目に「話者の多い言語」は?
  • 7
    「世界で最も嫌われている国」ランキングを発表...日…
  • 8
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 9
    そんなにむしって大丈夫? 昼寝中の猫から毛を「引…
  • 10
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 1
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 2
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 3
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止するための戦い...膨れ上がった「腐敗」の実態
  • 4
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 5
    「ただ愛する男性と一緒にいたいだけ!」77歳になっ…
  • 6
    投資の神様ウォーレン・バフェットが世界株安に勝っ…
  • 7
    コメ不足なのに「減反」をやめようとしない理由...政治…
  • 8
    まもなく日本を襲う「身寄りのない高齢者」の爆発的…
  • 9
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 10
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 7
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中