スウェーデンのNATO加盟はバルチック艦隊にとっての悪夢
Sweden joining NATO is a nightmare for Russia's Baltic Sea fleet
「海軍の日」のために整列したロシア海軍艦船(2022年7月、カリニングラード) Vitaly Nevar-REUTERS
<バルト海は実質的に「NATOの海」となり、ロシアは締め出される>
スウェーデンがNATOに加盟すれば、ロシア海軍のバルチック艦隊は「深刻な問題」に直面することになる――複数の専門家が本誌にこう指摘した。
ロシアはバルト海沿岸の飛び地であるカリーニングラードとロシア第2の都市サンクトペテルブルクに海軍基地を置いている。しかしスウェーデンがNATOに正式加盟すれば、バルト海沿岸国はロシアを除いて全てNATO加盟国となる。バルト海は実質的に「NATOの海」となり、ロシアのバルト艦隊は難題に直面することになると専門家は指摘する。
バルト海と沿岸諸国。ロシア以外はNATO加盟国に Peter Hermes Furian-Shutterstock.
2022年2月にロシアがウクライナに侵攻したことを受けて、2023年4月にはフィンランドがNATOに加盟。スウェーデンも近く加盟を承認される見通しだ。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は過去に、フィンランドとスウェーデンのNATO加盟に反対を表明し、「軍事的、政治的に重大な結果を招くことになる」と警告していた。
ロシアの懸念は外国部隊の駐留か
オランダのシンクタンク「ハーグ戦略研究所」の戦略アナリスト、フレデリック・マーテンズは本誌に対し、この拡大でNATOはバルト海とその沿岸だけでなく、上空でも防衛力を強化できると指摘。「NATOはこの分野で既に、圧倒的に優位な立場にある」と述べ、「ロシアのバルチック艦隊は深刻な問題に直面している」と分析した。彼はまた、スウェーデンの加盟によりNATOの空軍力が強化される一方、ロシアの艦船は地上配備型の防空システムに頼らざるを得なくなるだろうと主張した。
それだけではない。NATOがバルト海沿岸の支配を強化できるということは、「バルト海でロシアの艦船が、15メートル程度の低高度で飛行する(シースキミング)ミサイルが間近に迫って意表を突かれない場所はほとんどなくなる」ことを意味しているとマーテンズは指摘した。
米海軍分析センターの上級研究員であるドミトリー・ゴレンブルグは、スウェーデンはNATOに加盟することで、情報や諜報の共有などでこれまで以上にNATOと連携を強化することになると指摘。ロシアとしては今後、外国の部隊――とりわけ米軍の兵士たち――がNATO軍としてスウェーデン国内に駐留する可能性を懸念する可能性が高いと述べた。