最新記事
軍事

米軍、日本企業にTNT火薬の調達を打診 ウクライナ向け砲弾製造用途で

2023年6月2日(金)11時36分
155ミリ砲弾

ウクライナへの軍事支援を続ける米国が、砲弾の増産に必要な火薬を日本企業から調達しようとしていることが分かった。写真は155ミリ砲弾。米ペンシルバニア州スクラントンにある米陸軍工場で撮影(2023年 ロイター/Brendan McDermid)

ウクライナへの軍事支援を続ける米国が、砲弾の増産に必要な火薬を日本企業から調達しようとしていることが分かった。西側諸国がウクライナに戦車などを送る中、殺傷能力のある武器の輸出を禁止する日本は防弾チョッキなどの供与にとどめてきた。政府が輸出を認めれば、間接的ながら弾薬の支援に関わることになる。

事情を知る関係者2人が明らかにした。うち1人によると、米国は陸軍の工廠で製造する155ミリ砲弾に必要なトリニトロトルエン(TNT)の調達を日本企業に打診した。155ミリはウクライナ軍が最も多く使う砲弾の1つで、ロシアの軍事侵攻が長引く中、支援を続ける米軍は増産するためのTNTが不足している。

米国は日本を弾薬製造の供給網に組み込みたいと考えていると、同関係者は言う。

日本は防衛装備移転三原則で武器輸出を厳しく制限し、砲弾など殺傷能力のある装備は国際共同開発したものを除いて輸出を禁じている。特に紛争当事国への輸出は全面的に禁止してきたが、ウクライナ向けは昨年運用を変えるなどし、ヘルメットや防弾チョッキを供与した。

一方、堅牢さが特長のパナソニックのノートパソコンなど、軍が使うものでも一般に購入できる製品は三原則の対象にはならない。複数の日本政府関係者は、土木工事などに使う火薬であれば米軍の砲弾向けでも輸出できると話す。

輸出を管理する経済産業省によると、火薬類は必ずしも三原則の対象にならない。外為法に基づき審査し、問題がなければ輸出を許可する。一般に入手可能な火薬であれば、用途が砲弾であっても民生用として審査し、案件ごとに精査するとしている。

火薬の調達について米軍と日本企業が協議していることを把握しているかどうか経産省に尋ねたところ、同省の安全保障貿易審査課は「個別案件に関する回答は差し控える」とした。

武器輸出政策を所管する防衛装備庁は「個別企業の商取引について答える立場にない」と回答。その上で「日米の政府間では装備・技術協力について常日頃から様々なやり取りをしているが、詳細については相手国との関係上答えられない」とした。

社会的価値創造
「子どもの体験格差」解消を目指して──SMBCグループが推進する、従来の金融ビジネスに留まらない取り組み「シャカカチ」とは?
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

メキシコ大統領、強制送還移民受け入れの用意 トラン

ビジネス

Temuの中国PDD、第3四半期は売上高と利益が予

ビジネス

10月全国消費者物価(除く生鮮)は前年比+2.3%

ワールド

ノルウェーGDP、第3四半期は前期比+0.5% 予
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中