米軍、日本企業にTNT火薬の調達を打診 ウクライナ向け砲弾製造用途で
ウクライナへの軍事支援を続ける米国が、砲弾の増産に必要な火薬を日本企業から調達しようとしていることが分かった。写真は155ミリ砲弾。米ペンシルバニア州スクラントンにある米陸軍工場で撮影(2023年 ロイター/Brendan McDermid)
ウクライナへの軍事支援を続ける米国が、砲弾の増産に必要な火薬を日本企業から調達しようとしていることが分かった。西側諸国がウクライナに戦車などを送る中、殺傷能力のある武器の輸出を禁止する日本は防弾チョッキなどの供与にとどめてきた。政府が輸出を認めれば、間接的ながら弾薬の支援に関わることになる。
事情を知る関係者2人が明らかにした。うち1人によると、米国は陸軍の工廠で製造する155ミリ砲弾に必要なトリニトロトルエン(TNT)の調達を日本企業に打診した。155ミリはウクライナ軍が最も多く使う砲弾の1つで、ロシアの軍事侵攻が長引く中、支援を続ける米軍は増産するためのTNTが不足している。
米国は日本を弾薬製造の供給網に組み込みたいと考えていると、同関係者は言う。
日本は防衛装備移転三原則で武器輸出を厳しく制限し、砲弾など殺傷能力のある装備は国際共同開発したものを除いて輸出を禁じている。特に紛争当事国への輸出は全面的に禁止してきたが、ウクライナ向けは昨年運用を変えるなどし、ヘルメットや防弾チョッキを供与した。
一方、堅牢さが特長のパナソニックのノートパソコンなど、軍が使うものでも一般に購入できる製品は三原則の対象にはならない。複数の日本政府関係者は、土木工事などに使う火薬であれば米軍の砲弾向けでも輸出できると話す。
輸出を管理する経済産業省によると、火薬類は必ずしも三原則の対象にならない。外為法に基づき審査し、問題がなければ輸出を許可する。一般に入手可能な火薬であれば、用途が砲弾であっても民生用として審査し、案件ごとに精査するとしている。
火薬の調達について米軍と日本企業が協議していることを把握しているかどうか経産省に尋ねたところ、同省の安全保障貿易審査課は「個別案件に関する回答は差し控える」とした。
武器輸出政策を所管する防衛装備庁は「個別企業の商取引について答える立場にない」と回答。その上で「日米の政府間では装備・技術協力について常日頃から様々なやり取りをしているが、詳細については相手国との関係上答えられない」とした。