最新記事
ワグネル

<ワグネルの今後>ウクライナの戦場にはロシアが「ワグネル」を投入する、プリゴジンは......?

What Next for the Wagner Group?

2023年6月28日(水)16時19分
ブレンダン・コール

モスクワに進軍する前のワグネル戦闘員(6月24日、ロシア軍南部軍管区司令部) Reuters

<ワグネルの戦力はロシアにとって他に替え難い。ただしワグネルの戦闘員が正規軍の命令に従うかどうかは別問題>

【動画】ロシア軍兵士を殲滅した「殺人光線」の正体は?

エフゲニー・プリゴジンのものと見られるプライベートジェットが6月27日、ベラルーシに着陸したが、プリゴジンが率いる民間軍事会社ワグネルの未来は不明なままだ。

プリゴジンの所有とされる「エンブラエル・レガシー600型機」(エンブラエルはブラジルの航空機メーカー)が、現地時間午前7時37分にミンスク南西の飛行場に着陸したと、ベラルーシの人権監視団体「ハジュン・プロジェクト」が報告した。

ロシアで武装反乱を起こしたプリゴジンは24日、ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領が仲介したウラジーミル・プーチン大統領との取り決めにより、モスクワへの進軍を止めて隣国のベラルーシにやってきたとみられる。2日後、プリゴジンは「進軍の狙いは、ロシア軍指導部の無能さを追及することにあり、プーチン政権の転覆ではなかった」と述べた。

プリゴジンはさらに、ワグネルの独立性の維持も求めていた。これについてロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのシンクタンク「LSE IDEAS」のシニア・アソシエイト、レオン・ハートウェルはニューズウィークの取材に対し、「ワグネルはロシア正規軍に吸収される可能性もある」と話した。

ベラルーシのキャンプは罠?

アメリカのシンクタンク戦争研究所(ISW)も、プーチンが26日にワグネルの指揮官と戦闘員に向けて発したメッセージを受けて、ワグネルをロシア国防省に組み込みたいというロシア政府の意図を示していた、と述べた。

ワグネルは分割され、それによってロシア軍の既存の編成が強化される可能性がある。だが、プリゴジンの百戦錬磨の部下たちが果たしてロシア正規軍の命令に従うのか、という疑問は残る。

「反逆者を正規軍に吸収することは大きなリスクを伴うが、ウクライナの戦場では正規軍よりワグネルのほうがはるかに大きな戦果を上げてきたことを思えば、プーチンはワグネルの人的資源と経験を何としても必要としている」と、ハートウェルは言う。「プリゴジンを取り込まないことも、リスクを伴う。プリゴジンを野放しにしておけば、ウクライナ戦争の大義について、ロシアの公式プロパガンダと矛盾する発言を続ける可能性がある」

ロシアの反体制メディア「Verstka」は26日、ベラルーシ当局が、プリゴジンに従うワグネルの戦闘員を収容するためモギリョフ州に新たにキャンプを建設していると伝えた。プーチンは、ベラルーシはロシア正規軍に加わりたくないワグネル戦闘員たちの「避難所」だと説明した。だが、これが「罠」である可能性もあるとISWは述べている。ロシア政府は、そうした戦闘員たちを裏切り者と見なすからだ。

ワグネルが今後どうなるにしても、この軍事会社は、ロシア政府にとってきわめて便利な存在だった。これは、ワグネルがドネツク州の都市バフムトでの戦いを制したウクライナに限った話ではない。

社会的価値創造
「子どもの体験格差」解消を目指して──SMBCグループが推進する、従来の金融ビジネスに留まらない取り組み「シャカカチ」とは?
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

FRB、一段の利下げ必要 ペースは緩やかに=シカゴ

ワールド

ゲーツ元議員、司法長官の指名辞退 売春疑惑で適性に

ワールド

ロシア、中距離弾でウクライナ攻撃 西側供与の長距離

ビジネス

FRBのQT継続に問題なし、準備預金残高なお「潤沢
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中