<ワグネルの今後>ウクライナの戦場にはロシアが「ワグネル」を投入する、プリゴジンは......?
What Next for the Wagner Group?
モスクワに進軍する前のワグネル戦闘員(6月24日、ロシア軍南部軍管区司令部) Reuters
<ワグネルの戦力はロシアにとって他に替え難い。ただしワグネルの戦闘員が正規軍の命令に従うかどうかは別問題>
エフゲニー・プリゴジンのものと見られるプライベートジェットが6月27日、ベラルーシに着陸したが、プリゴジンが率いる民間軍事会社ワグネルの未来は不明なままだ。
プリゴジンの所有とされる「エンブラエル・レガシー600型機」(エンブラエルはブラジルの航空機メーカー)が、現地時間午前7時37分にミンスク南西の飛行場に着陸したと、ベラルーシの人権監視団体「ハジュン・プロジェクト」が報告した。
ロシアで武装反乱を起こしたプリゴジンは24日、ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領が仲介したウラジーミル・プーチン大統領との取り決めにより、モスクワへの進軍を止めて隣国のベラルーシにやってきたとみられる。2日後、プリゴジンは「進軍の狙いは、ロシア軍指導部の無能さを追及することにあり、プーチン政権の転覆ではなかった」と述べた。
プリゴジンはさらに、ワグネルの独立性の維持も求めていた。これについてロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのシンクタンク「LSE IDEAS」のシニア・アソシエイト、レオン・ハートウェルはニューズウィークの取材に対し、「ワグネルはロシア正規軍に吸収される可能性もある」と話した。
ベラルーシのキャンプは罠?
アメリカのシンクタンク戦争研究所(ISW)も、プーチンが26日にワグネルの指揮官と戦闘員に向けて発したメッセージを受けて、ワグネルをロシア国防省に組み込みたいというロシア政府の意図を示していた、と述べた。
ワグネルは分割され、それによってロシア軍の既存の編成が強化される可能性がある。だが、プリゴジンの百戦錬磨の部下たちが果たしてロシア正規軍の命令に従うのか、という疑問は残る。
「反逆者を正規軍に吸収することは大きなリスクを伴うが、ウクライナの戦場では正規軍よりワグネルのほうがはるかに大きな戦果を上げてきたことを思えば、プーチンはワグネルの人的資源と経験を何としても必要としている」と、ハートウェルは言う。「プリゴジンを取り込まないことも、リスクを伴う。プリゴジンを野放しにしておけば、ウクライナ戦争の大義について、ロシアの公式プロパガンダと矛盾する発言を続ける可能性がある」
ロシアの反体制メディア「Verstka」は26日、ベラルーシ当局が、プリゴジンに従うワグネルの戦闘員を収容するためモギリョフ州に新たにキャンプを建設していると伝えた。プーチンは、ベラルーシはロシア正規軍に加わりたくないワグネル戦闘員たちの「避難所」だと説明した。だが、これが「罠」である可能性もあるとISWは述べている。ロシア政府は、そうした戦闘員たちを裏切り者と見なすからだ。
ワグネルが今後どうなるにしても、この軍事会社は、ロシア政府にとってきわめて便利な存在だった。これは、ワグネルがドネツク州の都市バフムトでの戦いを制したウクライナに限った話ではない。