米国務長官を「格下あつかい」...異様なまでの「外交非礼」を見せた習近平に、アメリカが低姿勢を貫く理由
A FROSTY RECEPTION
「まずは腹を割った話し合いを」
軍同士の直通チャンネルは「潜在的な危機の回避に不可欠だ」と、クリシュナムルティも言う。「中国がホットラインのない状況で、(南シナ海などで)危険な作戦行動を行うことが抑止力になると考えているのだとしたら、大きな勘違いだ。むしろ逆効果をもたらすだろう」
中国がホットライン再開にノーを突き付けると中国が得をするとの指摘もある。一触即発の状況が続けば「米政府は米中関係を不安定化させるような措置を控えると、中国は踏んでいるようだ」と、米シンクタンク・民主主義防衛財団の上級フェロー、クレイグ・シングルトンは言う。
米側が対話再開を求めているのも、米中間の緊張が危険レベルまで高まっているからだ。バイデン政権に言わせれば、訪中が実現しただけでもささやかな外交上の成果だが、それが自慢の種になること自体、米中関係の救い難い悪化を物語っている。
米国務長官の訪中は「5年ぶり」だと、オバマ政権で国家安全保障会議のアジア上級部長を務めたエバン・メデリオスは指摘する。その5年間に米中間では「誤解が誤解を呼び、不信が蓄積されただろう」。
ブリンケン訪中が外交上長期的な意義を持つかを占う重要な指標は、中国がアメリカと高官レベルの協議を続けるかどうかだ。秦も近々訪米する予定で、米政府高官も次々に訪中するとみられる。米政府は中国側を説得し、11月にサンフランシスコで開催されるAPEC(アジア太平洋経済協力会議)サミットへの習の参加を実現したい考えだ。
「現時点では核心的な目標は信頼の回復ではない」と、戦略国際研究センターのスコット・ケネディは言う。「今の信頼レベルは非常に低いが、腹を割って率直に話し、互いの言い分を信用して聞くこと。その感覚を取り戻せば対話が可能になる」
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