米国務長官を「格下あつかい」...異様なまでの「外交非礼」を見せた習近平に、アメリカが低姿勢を貫く理由
A FROSTY RECEPTION
習はブリンケンを2列の長テーブルの端に座らせ、自分は座長席に収まった LEAH MILLISーPOOLーREUTERS
<ブリンケン米国務長官を露骨に冷遇した中国。それでも米バイデン政権には、訪中によって得たものがあった>
アントニー・ブリンケン米国務長官は6月18日、飛行機のタラップを降りて中国の大地を踏んだ。バイデン政権の閣僚としては初の中国訪問である。だが、そこに待ち受けていたのは何とも寂しい光景だった。北京国際空港でブリンケンを出迎えたのは少数の役人、それにニコラス・バーンズ駐中国米大使だけだ。この寒々とした出迎え風景がその後に続く2つの超大国間の一連の協議のトーンを決めることになった。
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ブリンケンは2日間の慌ただしい日程をこなした。中国の秦剛(チン・カン)外相との何時間にも及ぶ密室協議、今も中国の外交政策を統括する王毅(ワン・イー)前外相との会談、加えて中国の習近平(シー・チンピン)国家主席との短時間の面会(習は席の並び方で露骨にブリンケンを「格下」扱いした)。だが中国側の異様なまでに礼を失した対応が示すように、ブリンケン訪中は米中歩み寄りの一歩とは言い難いものだった。
バイデン政権のこれまでの対中政策を見れば、それも驚くには当たらない。何しろ台湾への軍事その他の支援を拡大しつつ、アジア太平洋地域で対中包囲網とも言うべき安全保障の枠組み構築を目指し、輸出入規制や制裁で経済面でも中国への締め付けを強化してきたのだ。
対中圧力をこの上なく高めつつ、緊張緩和を目指すバイデン政権の外交戦略は明らかに矛盾している。その矛盾が物語るのはジョー・バイデン米大統領のジレンマだ。米政界の対中強硬派は今やエンジン全開で中国脅威論を唱えている。彼らの存在を無視するわけにはいかないが、かといって強硬路線一辺倒で進むのは危険極まりない。気候変動対策では米中が協力する必要もあるし、米中競争のとばっちりを受けないよう米企業を守る必要もある。バイデンが米中間の「責任ある競争管理」を掲げたのはまさにそのためだ。だが中国はそんなバイデン節を鼻で笑う。
ブリンケンの訪中は緊張緩和に向けた重要な一歩
それでもバイデンの対中政策を支持する有力議員らは、ブリンケンの訪中を緊張緩和に向けた重要な一歩と評価する。東アジアの同盟国は米中の新冷戦が「熱い戦争」に発展する事態を何より恐れているが、今回の訪中はそうした懸念を和らげる効果もあったというのだ。
「関係の安定化には対話が不可欠だが、全体として(今回の訪中は)対話再開に向けた有望な一歩となった」と語るのは米下院に新設された「中国共産党との戦略的競争に関する特別委員会」で民主党を率いるラジャ・クリシュナムルティだ。「紛争と侵攻を抑止する備えを固めた上で、(緊張緩和を)目指せばいい」