先天性の四肢欠損の少年がパイロットになる夢を叶えた本当の話...「頑固さ」と「温かさ」を支えに
Flying With No Hands or Feet
時には頑固になることが自分の役に立つこともあるとアングリンは言う ZACHARY ANGLIN
<子供の頃から空を飛ぶことを夢見ていた生まれつき手足のない少年が、世界で初めて事業用操縦士の資格を手にするまで>
私は先天性の四肢欠損だ。生まれつき手と足がない。しかも養子で、きょうだいが18人もいる。母親は児童養護施設を運営しており、私自身はナイジェリア人。成長の過程で、私は環境に素早く適応することを学んでいた。
育ったのは米ウィスコンシン州。母の話では、私は8歳くらいになるまで自分に手足がないことに気付いていなかったようだ。きょうだいと張り合って木登りやスケートボードをしたり、トランポリンで跳びはねたり、ピザの最後の一ピースを取り合ったりしていたという。
パイロットになることは、ずっと夢だった。子供の頃、父に連れて行ってもらったミネアポリスの空港で、大きな飛行機が離着陸するのを眺めながら「僕も飛行機を操縦するんだ!」と思った。
高校の卒業が近づいた頃、パイロット志望であることを周囲に伝えた。すると、みんなが言った。「ザック、君の状態から考えると、それはちょっと難しい。もう少し安全な道を行こう」
学校の進路カウンセラーには法律家になることを勧められたが、私はノーと言った。私は時に頑固になる。それが時には自分のためになることもあるようだ。
2017年には航空学校5校に応募し、そのうち1校から合格通知をもらった。うれしさと感動で胸が震えた。
夢はかなったが、航空学校で数々の困難にぶつかることになる。米連邦航空局(FAA)の資格試験では、四肢欠損のため身体検査で5回はねられた。ここで持ち前の頑固さが役に立った。
私はFAAに電話をかけ続けた。1日に何百本もの電話を受ける係の人から、こちらが名乗る前に「またザックでしょ」と言われる始末だった。
操縦席でぶつかった困難
しつこく電話をかけ続けた結果、「SODA」の試験を受けられることになった。これは身体に障害があってもパイロットの訓練を受ける能力があることを証明する制度だ。
私の場合、SODAを取得するためには、まず3時間の訓練を受ける。さらに医学的に問題がないことを証明するため、FAAが指定したパイロットと一緒に空を飛ばなくてはならない。